今回からはスタートトゥデイの決算スライドを例に、僕がどんな読み方をするのか、説明していきましょう。使用するスライドは、2018年3月期第2四半期(Q2)の決算説明会資料です。期が変わっても基本的な記載項目が変わることは少ないですし、記載の順序などが変わっても見るべきポイントはほとんど変わりません。ほかの会社について見る場合でも応用できると思います。
1ページ目の「ハイライト」は読み飛ばそう
どんな会社でも、決算スライドの構成はおおよそ決まっています。表紙があり、その次はたいてい「ハイライト」です。スタートトゥデイのスライドでも、表紙の次にハイライトがあります。
しかし、僕はこのページは飛ばして見ることが多いです。というのは、ここに書いてあるのは、「わたしたちのために重要な数値」ではなく、「会社が重要だと思わせたい数字」が書かれていることも多いからです。
「売上は伸びているが利益は悪化した会社なら、売上推移だけを書いて利益は載せない」、あるいは「前回の記載は契約『数』だったのに今回は契約『額』であるといったように記載する項目を少しずらすことで印象操作も可能です。こうした恣意的な印象操作を避けて、フラットな目で見るために、意識して見ないようにしているのです。
ハイライトの次に来るのが、業績のサマリー(概要)です。「業績」というのは、まさに会社の事業の現実の数字ですから、こういうページを主体に見ていきます。
さて、スタートトゥデイの決算スライドでは3、4ページがサマリーに当たります。
ここでは、期別の数字が出ている4ページを読んでいきましょう。
いかがでしょうか? いきなりこういう数字を見ても、ピンとこない人が多いと思います。何を見たらいいのかは、業種によってちがうのですが、本連載では業種別に見方を解説していくのでご安心ください。
スタートトゥデイの場合で言うと、この会社はeコマースの会社ですから、見るべき数字は以下の3つになります。
(1)取扱高
(2)売上
(3)テイクレート
ようするに、どれくらいの大きさの事業で、どれくらい儲かるのかということを考えるためにこの3つが必要なのです。順番に説明していきます。
取扱高35%増は驚異的な数字
まずは「取扱高」から見ていきます。同社の運営するアパレルのECサイト「ZOZOTOWN」には、さまざまなブランドが商品を出品しています。取扱高というのは、出品しているブランドがZOZOTOWNで売り上げた総量です。
その取扱高は、約600億円。前年同期比で35.9%も増えているそうです。これはすごい数字です。
「取扱高35%増!」と言われてもピンと来ない人は、自分の家計を想像してみてください。たとえば、あなたの収入が1年前よりも35%増加したら、非常に大きなインパクトがありませんか? 2階級くらい飛ばして昇進しないと実現しないレベルですよね。
しかもスタートトゥデイの場合は時価総額1兆円を超える会社ですから、会社員でいえば平社員ではなく役員クラスです。そう考えると35%増加のインパクトはさらに大きなものがあります。
「では、他のeコマースの会社はどうなっているんだ?」と思うかもしれません。正確な数字ではないですが僕の「感覚値」としてAmazon、それに楽天のeコマース部門だとおよそ20%の成長率です。Amazonほどの規模で独占に近いポジションを占めているにもかかわらず20%成長するのも異常ですが、スタートトゥデイの取扱高の成長率はそれを上回る数字となっています。
さらに言えば、インターネット業界以外の会社であれば20%も売上を伸ばすのは困難です。たとえばトヨタ自動車が売上を20%伸ばせるかといえば、どう考えても難しいでしょう。
ちなみに28年ぶりに豊田家出身ではなく社長の椅子に座った奥田碩さんは、そんなトヨタ自動車で売上を伸ばしたから評価を高めたわけです。さらに余談になりますが、そんな奥田さんをモデルにしたと推測される小説が『トヨトミの野望』です。いかに奥田さんが——モデルだとすればですが——天才だったかが描かれています。
取扱高の次は、売上を確認します。スタートトゥデイの場合は、212億4200万円です。
テイクレートの算出方法
次に、テイクレートを見てみましょう。テイクレートとは「ZOZOTOWNで売れた金額のうち、どれだけスタートトゥデイに入るのか」を示す数字です。わかりやすくするために、次の式をご覧ください。
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