河邉徹
夢の持ち主に良くない影響をもたらす〝夢の乗っ取り〟
【他人の夢⑥】
その扉を開けると女性が立っていた。どうも彼女はミキコさんでなく、僕が現れたことに少し驚いているようだった。他人の夢を見ることは〝夢の乗っ取り〟というらしい。そして、彼女は僕が他人の夢を見る理由を教えてくれた
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>
イラスト:堀越ジェシーありさ
扉の向こうにあった通路は宇宙のようだった。天井や壁が妖しくうっすらと光っている。通路をまっすぐ行くと、入り口と同じ扉があり、マサキはゆっくりとその扉を開いた。
中は、全体的に薄いピンクがかった、優しい色遣いの部屋だった。初めて来た場所なのに、なぜか安心する空間だった。
部屋の中央にはベッドが置かれていて、こちら側とあちら側に一つずつ椅子が置かれている。右手側と正面に一つずつ扉があり、左手側には芸術的な雰囲気の大きな油絵がかけられている。マサキは以前課外活動で行った美術館を思い出した。その絵の横には、白いメモ用紙のようなものが貼られてある。うっすらと色がついていて、そちらも絵が描かれているようにも見える。
「あれ?」
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この連載について
河邉徹
WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の
〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。
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著者プロフィール
1988年6月28日、兵庫県生まれ。関西学院大学 文学部 文化歴史学科 哲学倫理学専修 卒。ピアノ、ドラム、エレクトリック・ベースの3ピースバンド・WEAVERのドラマーとして2009年10月メジャーデビュー。バンドでは作詞を担当。
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