技術者の官僚主義に対する小さな勝利

「私」はどこからきたのか?1969年7月20日。人類がはじめて月面を歩いてから50年。宇宙の謎はどこまで解き明かされたのでしょうか。本書は、NASAの中核研究機関・JPLジェット推進研究所で火星探査ロボット開発をリードしている著者による、宇宙探査の最前線。「悪魔」に魂を売った天才技術者。アポロ計画を陰から支えた無名の女性プログラマー。太陽系探査の驚くべき発見。そして、永遠の問い「我々はどこからきたのか」への答え──。宇宙開発最前線で活躍する著者だからこそ書けたイメジネーションあふれる渾身の書き下ろし!人気コミック『宇宙兄弟』の公式HPで連載をもち、監修協力を務め、NASAジェット推進研究所で技術開発に従事する研究者 小野雅裕がひも解く、宇宙への旅。 小野雅裕の書籍『宇宙に命はあるのか ─ 人類が旅した一千億分の八 ─』を特別公開します。

一九八〇年十一月、ボイジャー1号は土星とその衛星タイタンの探査を成功裏に終え、2号の土星スイングバイまではまだ九ヶ月の余裕があった。ここに至って技術者たちは、2号の軌道に忍ばせた「仕掛け」を明かした。

惑星と衛星の並びの関係で、タイタンを訪れたら天王星・海王星に行くことはできない。二者択一だ。1号はタイタン行きの軌道だった。一方、2号の軌道は、1号が土星・タイタン探査を終えた後に、タイタンに向かうか天王星・海王星へ向かうかを選べるように設計されていたのである。土星に接近する角度と距離を微調整することで、スイングバイ後の目的地を変更できた。それが「仕掛け」だった。

もし姉の1号がタイタン探査に失敗したら、妹の2号もタイタンに向かう予定だった。だが姉はタイタン探査の任務を十二分に果たし、ボイジャー計画本来の目的は全て達成されていた。

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宇宙に命はあるのか ─ 人類が旅した一千億分の八 ─

小野雅裕

銀河系には約1000億個もの惑星が存在すると言われています。そのうち人類が歩いた惑星は地球のただひとつ。無人探査機が近くを通り過ぎただけのものを含めても、8個しかありません。人類の宇宙への旅は、まだ始まったばかりなのです…。 NASA...もっと読む

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