一九八〇年十一月、ボイジャー1号は土星とその衛星タイタンの探査を成功裏に終え、2号の土星スイングバイまではまだ九ヶ月の余裕があった。ここに至って技術者たちは、2号の軌道に忍ばせた「仕掛け」を明かした。
惑星と衛星の並びの関係で、タイタンを訪れたら天王星・海王星に行くことはできない。二者択一だ。1号はタイタン行きの軌道だった。一方、2号の軌道は、1号が土星・タイタン探査を終えた後に、タイタンに向かうか天王星・海王星へ向かうかを選べるように設計されていたのである。土星に接近する角度と距離を微調整することで、スイングバイ後の目的地を変更できた。それが「仕掛け」だった。
もし姉の1号がタイタン探査に失敗したら、妹の2号もタイタンに向かう予定だった。だが姉はタイタン探査の任務を十二分に果たし、ボイジャー計画本来の目的は全て達成されていた。
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