◆#28◆
銃弾がサカグチの頭めがけて飛ぶ。だがサカグチは黒い防弾長財布を構え、それを遮った。防がれた。しかもブリーフケースじゃなく、長財布で。只者じゃない。さらに、おれに向かって発砲してきた。
「くそッ」
反撃を予想していたおれは、咄嗟に机の上で身をかがめ、防弾ブリーフケースで身を守った。
「あいつを殺せ!」
サカグチが叫ぶと、新たな悪漢どもが机の上に乗り、拳銃やカタナを構えておれに向かってきた。まったくキリがない。おれはマニュアル通り、警告を発した。
「第一人事部の寛大な措置にその身を委ねろ! 第一人事部の慈悲か、そこの外部コンサルタントの言葉か、どっちを信じる!?」
「人事部なんざ、信じられるかァーッ!」
全身をユナイテッドアローズでキメた髭の社員が突撃してきた。もっともな意見だ。
BLAM!
おれはそいつの胸を撃ち抜き、そこから激しい乱闘が始まった。横並びオフィス机の上に置かれていた書類や、ガンダムのフィギュアや、謎のハイセンスな縫いぐるみや、ペットボトル飲料のオマケなどが、めちゃくちゃに蹴り飛ばされて宙を舞った。反対側では奥野さんの突撃でパーティションが破壊され、かなり風通しがよくなっていた。
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