字が綺麗な男に隙はない

葬式で神戸に戻っている百鳥ユウカさん。そこで、一番会いたくなかった男と再会することになる。

喪主であるはずのアキは、ユウカと一緒に葬式まんじゅうの宛名書きを台所横の小部屋で行なっていた。

きっとこの女(ひと)はひとりでは生きていけない。アキはこれからどんな人生を歩むんだろうと思っていたその時、部屋に誰かがやってくる気配がした。

トントン。

ドアをノックした音とともに聞こえたのはユウカの聞き覚えのある声だった。

「アキさん、そこにいるんですか?」

「あら、先生?」

そう言ってドアを開けた先には、ユウカがよく覚えている男が立っていた。

高畑だった。アキの飼い犬ジョンの主治医であり、ユウカが昔、恋い焦がれてた男。

「アキさん、突然のことで驚きましたが、大丈夫ですか?」

ユウカの存在を確認したくせに、アキにだけ言葉をかけたことがユウカの内心を少し乱した。

「みんな聞くことは同じね。大丈夫なんて簡単に言えるわけないけど、でも、大丈夫よ」

「すみません。僕にできることがあればなんでも言ってください」

「ありがとう。先生は、これからもジョンをみてくださる。2週間に1回のトリミングは変えずにお願いね。さてと、私もそろそろ通夜に顔出さないといけないわね。続きは先生、ユウカと一緒にお願いできるかしら?」

「はい」

高畑は、何を頼まれたかもよくわかっていないくせに、何の躊躇いもなくYESと答えるところは変わってない。

「よろしくね」

そう言ってアキはあっさり部屋を出て、代わりに高畑はさっきまでアキが座っていた椅子に腰をかけて、ユウカの顔をみて声をかけた。

「ユウカさん、久しぶりだね」

「うん……」

気まずいはずの再会でも、感情の揺れを見せずに高畑はあっさりとした態度をしている。

「まさか会えるとは思ってなかったよ。いや……実は少し期待はしてたかな。受付の人に聞いたら、アキさんは東京から来た女性と一緒にこの部屋にいるっていうから。アキさんは君を頼りにしていたしね」

「えっ、アキさんが私を頼りに……なんてありえませんよ」

「相変わらず君は自分のことがよくわかってないね。そこが君の魅力だったりするんだけど」

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結婚できない2.0〜百鳥ユウカの婚活日記〜

菅沙絵

友人たちが彼女につけたあだ名は「レジェンド・ユウカ」。結婚市場に残された最後の掘り出し物という意味だと説明されたが、たぶん揶揄する意味もある。妥協を知らない彼女が最後にどんな男と結婚をするのか、既婚の友人たちは全員興味深げにユウカさん...もっと読む

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コメント

shizu8sisiy 続きが気になる展開来た(笑) 2年以上前 replyretweetfavorite

namimori0801 こんなん結婚しちゃう 2年以上前 replyretweetfavorite

marekingu #スマートニュース 2年以上前 replyretweetfavorite