イラスト:堀越ジェシーありさ
寝る前に、以前明晰夢を見る訓練をしていたことを思い出す。もう見れなくなってしまっているだろうか。緊張感を持ってベッドに入ったせいで、その日はなかなか寝つくことができなかった。それでも目を閉じていると、少しずつ意識が遠のいていった。
*
加藤はまた、高層ビルのオフィスにいた。
そう、これは夢だ。自分が見ている夢。そして、理想の夢。自分はここが好きだ。自分で手に入れた場所だ。また取り戻さなければならない。
辺りを見渡すと、あの頃と変わらないままのロビーだった。窓に向かって大きなソファが置いてあり、パーティーの日、ここで橋本と内田と三人で夜景を眺めていたことを思い出す。
長い時間、ここにはいられないだろう、早くあの青い扉を探さなければ。
どんな扉か、もうその正体がわかっている今、それを見つけることは以前ほど難しくなかった。
ロビーの入り口の横に、この前見たものと同じ、真っ青な扉があった。
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