大阪泉大津フェニックスで行なわれる夏フェス「OTODAMA〜音楽魂」から、FOK46としての出演オファーを受けた。
興奮と喜びはどれほどのものであったろうか。
「俺が!? 夏フェスに!? 弾き語りで!!」
46歳の職業ロックミュージシャンは16歳の高校生男子のごとく拳握りしめワナワナと震えたものである。
夏フェスには何度となく出演している。
国内最大級のフジロックにも出たし、ロッキンジャパンフェスにも参加した。OTODAMAもすでに数回出ている。だがそれは筋肉少女帯としての出演である。プロデビュー二十数年のバンドならばそれはまぁ出ても不思議はないであろうと客観的に思える。
だが、今回は違う。一人だ、男一匹だ。たった一人の弾き語りなのだ。FOK46夏フェスデビューなのだ。
しかも40代から習い始めてわずかに数年目の出来事なのである。一大事だった。
これは中二で習い始めた弾き語りで、高二の学園祭に出演が決まった「俺、ついにここまで来たよ」みたいなリア充感をそのままガタッと30年人生の後方にズラせたかの遅すぎる青春の心象風景である。
こんなステキな機会に恵まれる者など中年男世界にそうそういるもんではないと断言できる・・・って言うか「オレぐらいのもんでしょ?(ニヤリ)」とちょっとえばってみたい気にさえなるでないか。
「やった。このためだ。一人ぼっち町スタ特訓の意味はこのためにあったのだ」そう思った。
そしてその日から夏フェスにむけてまた一人ぼっち町スタ特訓を始めたわけである。
夏フェスとあって演奏楽曲にも変化が必要であると考えた。
夏だものフェスだもの、ワッ!っと大盛り上がりたい輩が大量に来るはずだ。
若者たちに“俺のギター”で思いっ切り騒いでもらえるよう、「日本印度化計画」と「踊るダメ人間」をセットリストにまず加えた。
両曲とも、アップテンポのロックナンバーだ。ガッ!と盛り上がってもらって、でもまずその前に「なんかスゲーやつが出てきたぞ。」と驚かせるための“つかみ”の一曲が必要だ。これはもう例の「死んでいく牛はモー」が適任であろう。
などと、綿密な夏フェス作戦を想定し、だがついに当日、カッと快晴の夏の太陽に照らし出された泉大津フェニックス会場ステージ脇でFOK46は「どんな綿密な作戦にも想定外の事態は起こりえる」と心底思うはめになったのである。
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