すばらしい話の内容も「声」で台なしになる
私は「話す」ことを仕事にしてきたので、人の「声」がとても気になります。やはり、いい声を聞くと好印象をもちますし、反対に声が小さく聞き取りづらいと、悪い印象につながってしまいます。コミュニケーションがうまくいかない人は、単に声が小さくて聞き取りづらいことに問題があるかもしれません。いい声を出しているところには、不思議と人もお金も集まってくるように感じています。
私は企業研修などでさまざまな会社を訪問する機会がありますが、売上が好調な会社に行くと、社員のみなさんが元気よく挨拶をしてくれます。オフィス内もいろいろなところから「了解しました!」「よろしくお願いします!」といった声が聞こえてきて活気に満ちています。一方、売上が低迷している会社は、オフィス内を歩いていても挨拶がありませんし、あったとしても蚊の鳴くような小さな声です。活気もありません。研修をしていても、「声」がいい社員のいる会社は、呑み込みが早く、ぐんぐん話し方も上達していきます。逆に、「声」に元気のない会社は、同じ研修をしてもなかなか成果としてあらわれません。
私の経験則で言えば、「声」と仕事の成果には因果関係があります。いい声のところには、いい人が集まってきて、仕事もうまくいくのではないでしょうか。それは、個人のレベルでも同じです。本番では第一声が勝負。いくら話の内容がすばらしくまとめられていても、ボソボソと小さな声では台なしです。最初の「はじめまして」の声が暗くてか細いと、「この人、大丈夫かな」と相手を不安にさせてしまいます。特に緊張すると、呼吸が浅くなり、声がどんどん小さくなってしまいます。早口で聞き取りづらいのもNGです。どんな声で話すかは、あなたの話の印象を大きく左右します。
私がブライダルの司会をする際、事前に新郎新婦と進行の打ち合わせをする機会があります。通常はこの1回の打ち合わせだけで本番に臨むので、ここでお二人の信頼を得る必要があります。そこで、私は顔を合わせたときの第一声に神経を使っています。にこやかな笑顔で「このたびはおめでとうございます!」と明るく、張りのある声でお伝えします。このひと言だけで、「うわっ、さすがプロの声は違う!」と思われたら大成功。「佐藤さんに任せれば大丈夫」と信頼してもらえれば、そのあとの打ち合わせはもちろん、本番もうまくいきます。
逆に、第一声で「この人で本当に大丈夫かな……」と疑心暗鬼になられてしまうと、その後のコミュニケーションもぎくしゃくしてしまいます。私はブライダル司会の仕事を通して、毎日のように第一声の大切さを身に染みて感じているのです。ミス・ユニバースのビューティーキャンプでも、私は講師として、いい声を出すための腹式呼吸のしかたや滑舌改善などのボイストレーニングを行っています。ビューティーキャンプに参加する女性は、本格的なボイストレーニングを受けた経験のない人も多く、最初は声が小さく、頼りなさげに聞こえます。
しかし、そのまま本番の舞台に上がってスピーチをしたら、間違いなく勝ち抜くことはできません。声が小さいことは、そのまま自信がないという印象につながってしまいます。ミス・ユニバースのような特殊な環境に限らず、ビジネスの場では声が小さいと損することになります。声が小さいだけで元気がないように見えますし、伝える能力も半減します。また、信用を得ることができず、「この人に仕事は任せられない」という評価を下されてしまいます。
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