話す前に「視線」で語る
ミス・ユニバースで評価される人は、スピーチを始める前から存在感(オーラ)を醸し出しています。スピーチの順番がまわってきたら、マイクの前までランウェイを歩いていくのですが、そのときもただ進行方向をまっすぐ見て歩くのではなく、審査員や観客のいる方向に顔を向けて歩きます。実際に話す前から、視線を向けて、無言で語りかけているイメージです。
「目は口ほどにものを言う」といいます。アイコンタクトは信頼関係の証です。好きな相手に対しては目を見て話しますよね。こちらから視線を送ることは、「あなたに興味があります」というメッセージになります。マイクの前に立ったら、呼吸を整えながら会場をゆっくりと見渡し、審査員や観客に視線を送ります。そして、5秒ほどの沈黙。会場がシーンと静まり返ったところで、ニコッと笑ってようやく自己PRを始めるのです。話し始める前に、沈黙とともに会場をゆっくり見渡すという動作は、堂々と落ち着いた印象を与えます。また、一気に聴衆の視線が集まり、存在感をアピールすることにもつながります。
ちなみに、ミス・ユニバースでは自己PRの制限時間はおよそ20秒と決められていますが、話し始める前の時間はカウントされません。だから、彼女たちは20秒のトークを始める前の時間を有効活用しています。話す前に「視線」で語るのです。これは、一般のスピーチやプレゼンなどのときも同様です。すぐに話し始めるのではなく、5秒ほどの沈黙を入れる。すると、聞き手はあなたに注目し、聞く態勢が整います。
沈黙を入れるときは、アイコンタクトも大事です。自分に注目してほしければ、自分から相手を見て、「私を見てください」と無言のメッセージを送る必要があります。会場が大きく、聞き手が多数の場合は、「の」の字を描くように全体を見渡します。このとき、端っこにいる人とアイコンタクトをするようにすると、全体的にバランスよく視線を送ることができます。
1対1の商談などのケースでも沈黙は有効です。1対1で沈黙すると、気まずく感じるかもしれませんが、適度な沈黙を挟むと、相手のほうから話してくれます。本当の話し上手は聞き上手です。特に、商談の場合は相手のニーズを聞き、それに合った商品やサービスを提案するのが王道です。相手のニーズを探ることなく、一方的にセールストークを展開すると、どんどん相手の心は離れていきます。沈黙を怖がってはいけません。
もちろん、アイコンタクトをするのは、最初だけではありません。話している最中も、原稿ばかり見ずに、視線を聞き手に送ることで、メッセージが伝わりやすくなります。基本的には「の」の字を描きながら全体を見渡すのですが、必ず目を合わせてくれる人やうなずきながら話を聞いてくれる人がいます。つまり、反応がいい人です。そういう人を早めに見つけて、彼らに語りかけるように話すと、自信がついて緊張も解けて、スムーズに話すことができます。
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