「実況中継」で会話力はアップする
日々の出来事を「実況中継」することも語彙力や対話力を磨くことにつながります。ラジオ局のアナウンサーだったとき、私は毎日生放送で街の話題などをレポートする仕事をしていました。ラジオの生放送なので、沈黙が続いてしまったら、放送事故と勘違いされてしまいます。アナウンサーは話し続けなければなりません。
たとえば、お店のレポートをするときは、店内の雰囲気や装飾にはじまり、メニューの内容、料理の見た目や味の感想など、目に入るものは、なんでも言葉で表現していく。店員さんやお客さんがいれば、インタビューをします。プレッシャーのかかる仕事でしたが、毎日生放送でレポートしていたおかげで、今ではどんな状況でも言葉を紡ぐことができるようになりました。そこで、みなさんにおすすめしたいのは、日常生活の一場面を「実況中継」することです。
「六本木ヒルズにやってきました。下から見上げると、圧倒される高さです。最上階は何階なのでしょうか。六本木ヒルズには外国人の観光客がたくさんやってきています。アジア系ばかりでなく、欧米からの観光客も多くいます。その一人がカメラを取り出し、花壇の花を撮影し始めました……」
このように目に入る風景や状況をそのまま言葉にしていくのです。3分間続けると、かなり多くの言葉を発することになります。これは、アナウンサーも取り入れているトレーニング方法ですが、よどみなく言葉が出てくるようになると、とっさの場面でも瞬時に豊かな表現で伝えられるようになります。「言葉の瞬発力」が身につくのです。自分の番組をもったつもりで、実況中継にチャレンジしてみてください。
また、フリートークの練習をするのも実況中継と同じような効果があります。私がブライダル司会のスタッフを指導するとき、突然「最近うれしかったことを3分で話してください」「おすすめのレストランを3分で教えてください」といった課題を出すことがあります。お題に合わせて、臨機応変にフリートークをすることで、「言葉の瞬発力」は高まりますし、コミュニケーション力もアップします。
一人でフリートークを鍛えることもできます。「この1週間で楽しかったこと」「この1週間で悲しかったこと」「この1週間で感動したこと」などのお題を書いた紙を用意しておき、ひとつランダムに選ぶ。そして、3分でそのお題について話してみるのです。2016年までフジテレビ系列で放送されていた『ライオンのごきげんよう』のサイコロトークを一人でする感覚です。もちろん、一緒にトレーニングする仲間がいれば、みんなで『ごきげんよう』ごっこをしてみても楽しいですね。ふだんからこのような練習をしておけば、突然フリートークをしなければならないシチュエーションでも困ることはありません。
同じ表現を繰り返さない
簡潔にまとめた話の中に同じ表現が繰り返し出てくると、聞き手にはくどい印象を与えます。たとえば、次の社内プレゼンはどうでしょうか。
「当社は売上増のために広告戦略の見直しをせざるを得ません。(中略)あわせて、SNSの活用についても検討せざるを得ないと考えています。(中略)さらには、人材教育にも力を入れざるを得ないのです」