第9回 単利と複利の話 

「毎月定期的に分配」――。投資信託などの金融商品によく見られる謳い文句。これに魅かれて商品を買ったことはありませんか? 確かに魅力的な言葉ですが、これが、結果的に大きな損をする原因に。その秘密は、利息の受取方法、「単利」と「複利」のちがいにあります。謳い文句にだまされない、金融商品の見極め方を教えてもらいましょう。(『いきいき』2012年9月号より転載)

今回は、お金を増やすのにもっとも大事な「複利」について説明します。「そんなこともうわかってるよ」というひともいるかもしれませんが、ほんとうに大丈夫ですか? もしかして、「毎月分配型投信」を買ったりしていませんか?

銀行にお金を預けると、利息がつきます。この利息の受け取り方に、ふたつの方法があります。それが、「単利」と「複利」です。日本では超低金利で利息がほとんどつかなくなって、単利でも複利でもたいしてちがわなくなってしまいました。しかし金利が上がってくると、どちらを選ぶかで人生が大きく変わるかもしれません。

話をわかりやすくするために、銀行預金の金利を年5%としましょう。この定期預金に100万円を預けると、1年後に5万円(100万円×5%)の利息がつきます。単利では、この5万円の利息は現金で支払われ、預金の元本は100万円のままです。1年後にはまた5万円の利息がつきますから、10年経てば利息の合計は50万円(5万円×10年)。ここで預金を解約すると元本の100万円が返ってきて、利息(50万円)を加えて計150万円を手にすることになります。最初の100万円は、10年間で50%増えたのです。

資産運用は利息を再投資する複利が得

ここで、1年目の利息5万円を現金で受け取らず、そのまま口座に残しておいたらどうなるでしょう。この場合、2年目の運用は105万円(元本100万円+利息5万円)で始まります。元本が105万円、金利が5%なら、利息は5万2500円です(105万円×5%)。利息を元本に組み入れる(再投資する)ことで、2年目の利息は単利に比べて2500円増えました。単利が利息を払い出してしまうのに対し、複利の運用では利息を再投資して元本を増やしていきます。

これを繰り返すと、3年目の利息は5万5125円、4年目は5万7881円……となって、10年目には元本と利息の合計は162万8895円になっているはずです。単利のときは150万円でしたから、運用を複利に変えただけで資産が13万円ちかく増えたことになります。

複利のパワーは、運用期間が長期になればなるほど大きくなります。期間20年では、単利なら100万円(5万円×20年)の利息しか得られませんが、複利では約165万円と単利の利息の6割以上も多くなります。期間30年では、単利の利息が150万円に対して複利は約332万円と2倍以上になるのです。この単純な計算から、「資産運用は単利よりも複利のほうがずっと得だ」ということがわかります。

得した気になる「毎月分配」型

さて、本題はここからです。日本でだけ人気の金融商品に、「毎月分配型投信」があります。 “国民的ファンド”とまで呼ばれたグローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)がその典型で、海外の債券などに投資して、毎月一定のお金が分配されるのが特徴です。

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