通夜に参加しながら、ユウカは人の一生の不思議さに思いを馳せていた。人はただ、生まれて死んでいくだけなのに、なぜこんなに悲しいんだろう。
さっき、アキと台所ですれちがったら、目に涙をまた浮かべていた。
初めてここにやってきた日に、3人で一緒に焼きそばを食べた広いリビングは、ソファなどは取り払われて、座布団とインスタントの畳が敷き詰められている。
そして、中央に祭壇が作られて、そこには竜平さんの遺影と亡骸が安置されていた。
通夜には想像通り、大勢の人がやってきていた。
親族、仕事で関わりのあった人たち、昔からの仲間、竜平さんの交友関係の幅広さをうかがわせた。ユウカは受付を手伝うことになり、庭先に簡単な机と椅子を置き、次から次へとやってくる人たちの対応に追われていた。
葬儀屋からもらった名前の記帳用ノートはすでに半分以上埋まっており、このままいくと次の一冊が必要かもしれない。
「百鳥ユウカさん、ちょっと……」
葬儀屋の人か竜平さんの会社の人かわからないけど、通夜を取り仕切ってくれている50代の男性からフルネームで声をかけられた。
ちょうど受付もひと段落したところだったので、話を聞くと「中であなたのことを亜希さんが呼んでます」ということだった。
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