楽しく長く働くにはどうすればいい?
『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)
得意なことに専念できるメリット
フリーエージェント戦略のいちばんのメリットは、“スペシャルなもの”をもてるようになることです。
日本の会社では「伝染病」のようにうつが蔓延しています。その原因が長時間労働だとして、官民あげて「時短」の掛け声をあげていますが、なかなか残業時間は減りません。その理由は残業代が生活給になっているからで、時短で給料が減ると生活が苦しくなるので、サラリーマンの多くが残業代がつくかぎり会社にいようとするからだといいます。
これはたしかに歪んだはたらき方ですが、それを無理矢理やめさせれば、うつ病は減るのでしょうか。
多くのサラリーマンを診察してきたメンズヘルスの専門医は、そうは考えていません。サラリーマンが出社拒否になる理由は、長時間労働で燃え尽きるからではなく、仕事が要求するレベルに自分のスキル(専門性)が届かず、行き詰まってしまうからだというのです。
なぜこんなことになるかというと、日本の会社がスペシャリストを養成せず、いろんな部門をそこそこ任せられるゼネラリストばかりを揃えようとしてきたからです。その結果、それぞれの分野が専門化するにつれて、自分のスキルが追いつかなくなってしまったのです。
それに対してフリーエージェントは、ひとつのこと(好きなこと/得意なこと)にすべての時間を投入することができますから、専門化する分野にもついていくことができます。こうしてあちこちで、仕事を発注する会社と、下請けであるフリーエージェントの関係が逆転するという現象が起こるようになりました。
といってもよくわからないでしょうから、いまの日本でどんなことが起きているか、例をあげて説明しましょう。
スペシャリストの強み
美容・健康関係の大手企業が顧客に配布する雑誌をつくることになり、大手広告代理店がその仕事を落札しました。かなり大きなプロジェクトで、雑誌づくりは広告制作会社が引き受け、わたしの知り合いのフリー編集者が手伝うことになりました。
医療はもっとも専門化が進んでいる分野のうえ、薬機法の制約もあって、誇大広告にならないように書かないと処罰されてしまいます。ところが広告代理店も、広告制作会社も、そんな知識をもっている人間は一人もいません。広告代理店は体育会系の営業マン(営業ウーマン)の集まりなので、「医療・健康チーム」などといっても、その分野のスペシャリストなどいないのです。
フリー編集者の彼女はこれまでずっと健康関係の仕事をしてきたので、それぞれの分野にどんな医者がいるかとか、法的にはどこを注意しなければならないとか、ひととおりの知識をもっていました。
そうなると、彼女はいちばん末端の下請けにもかかわらず、クライアントとの会議のときに、質問にすべてこたえることになってしまったのです。大手広告代理店の「エリート社員」たちは、その間、ただ黙ってうなずいているだけです。
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