おとぎ話の中には事実が隠されている

【過去の夢⑧】
一時期の栄華はまさに夢のようだった。転がり落ちる時は早い。会社には居場所がなくなり、飲み歩いていた時、以前バーで会ったあの男が言っていた「夢工場」の話を思い出した
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>


イラスト:堀越ジェシーありさ

2018年5月23日、 WEAVER 河邉 徹、小説家デビュー作『夢工場ラムレス』発売決定! 発売に先駆けてWEAVERの杉本 雄治が手掛けたテーマ曲とともに 『夢工場ラムレス』の世界を映像化!


「加藤、もう諦めよう。この勝負は、俺たちの負けだ」

 橋本がそう言った。四年目は大きな赤字を出したネオTVだったが、それでも巻き返しのチャンスをずっと狙ってきた。しかしYume-TVが現れ、ネオTVに「古い」印象がついてしまった今、なかなか結果を出すことができなかった。本社であるネオブログからは、「もうそろそろ……」という噂も出始めていた頃だった。

 加藤は焦りと悔しい気持ちでいっぱいだった。自分がやってきた三年間は、Yume-TVの為のお試し期間だったのだろうか。何もないところに、自分が懸命に舗装してきた道を、後から堂々と歩いてきたヤツらではないか。

 週刊誌には「ネオTVという滑走路、Yume-TVという飛行機」という見出しで記事が書かれた。まさに、積み重ねてきたものを横取りされたような気持ちだった。

 親会社であるネオブログの方針として、子会社を処分するということが決まってから、話が進むのは早かった。ネオブログも本社自体が好調とは言えない今、採算の取れない子会社を抱え込むわけにはいかない。

 もともとネオブログの社員であった加藤や橋本や内田は、親会社のどこかの部署に戻ることもできるだろう。他の社員も、希望に添えるかはわからないが、一応仕事は斡旋できる。

 しかし、たとえそうであっても、加藤は肩身の狭い思いをした。自分も親会社に戻ったからといって、以前のような責任のある仕事は与えられないだろう。もともとプライドの高い性格の加藤には、到底耐えられないことだった。

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夢工場ラムレス

河邉徹

WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の 〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。 ...もっと読む

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