イラスト:堀越ジェシーありさ
2018年5月23日、 WEAVER 河邉 徹、小説家デビュー作『夢工場ラムレス』発売決定! 発売に先駆けてWEAVERの杉本 雄治が手掛けたテーマ曲とともに 『夢工場ラムレス』の世界を映像化!
「加藤、もう諦めよう。この勝負は、俺たちの負けだ」
橋本がそう言った。四年目は大きな赤字を出したネオTVだったが、それでも巻き返しのチャンスをずっと狙ってきた。しかしYume-TVが現れ、ネオTVに「古い」印象がついてしまった今、なかなか結果を出すことができなかった。本社であるネオブログからは、「もうそろそろ……」という噂も出始めていた頃だった。
加藤は焦りと悔しい気持ちでいっぱいだった。自分がやってきた三年間は、Yume-TVの為のお試し期間だったのだろうか。何もないところに、自分が懸命に舗装してきた道を、後から堂々と歩いてきたヤツらではないか。
週刊誌には「ネオTVという滑走路、Yume-TVという飛行機」という見出しで記事が書かれた。まさに、積み重ねてきたものを横取りされたような気持ちだった。
親会社であるネオブログの方針として、子会社を処分するということが決まってから、話が進むのは早かった。ネオブログも本社自体が好調とは言えない今、採算の取れない子会社を抱え込むわけにはいかない。
もともとネオブログの社員であった加藤や橋本や内田は、親会社のどこかの部署に戻ることもできるだろう。他の社員も、希望に添えるかはわからないが、一応仕事は斡旋できる。
しかし、たとえそうであっても、加藤は肩身の狭い思いをした。自分も親会社に戻ったからといって、以前のような責任のある仕事は与えられないだろう。もともとプライドの高い性格の加藤には、到底耐えられないことだった。
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