#美由紀 #17歳 #高校生 #スマホ越しでもずっとずっとつながってたい
「美由紀、おまえおせーよ」
「ごめんってー。体育館の片付けに時間かかっちゃって」
スマホの向こうで待ちくたびれた水野に謝りながら、私はスマホをクッションに斜めに立てかけてセットする。
学校から帰って夕飯をすませた後、こうしてLINEのビデオ通話をつけっぱなしにして過ごすのが、水野が東京に転校して以来2ヶ月続く私たちの日課だった。
私はベッドに突っ伏すと、同じように寝転がる水野を見つめて、今日のできごとを話し出した。
「それでクラスマッチの決勝戦ね、結局負けちゃって二位止まりだったんだ」
「なんだよ。他のバスケ部はどーなってんだよ」
私が愚痴ると、元バスケ部の水野は待ってましたとばかりに乗ってくる。
「みんながんばってたけど、全然点が決まらなくて。残り30分は地獄やったわ」
「やっぱり俺がいないとだめやなぁ」
その自信たっぷりな言い方は、出会った中学のときから変わらない。
懐かしくて思わず笑ってしまった。
「ね、そっちの学校はどうなの?」
「相変わらずだよ。さすがにこんなに中途半端な時期に入っちゃねえ。クラスも多いし、受験前だから俺が転校してきたくらいみんな気づかないんじゃないの」
この質問をするたび、水野がキャラに似合わず弱気なことを言うもんだから、私はいつもなんて答えるべきか悩んでしまう。
「それより、せっかく顔が見れるのにちっとも脱いでくれないの?」
「バカ。なに言ってんの」
私が適当にあしらうと、水野は頭をかいて「つまんねーな」と笑いながらつぶやいた。
LINEは時々回線が遅くなって、水野の顔がぶれたまま静止する。
映像が止まるたびに、今の私たちはスマホがないと顔を見ることさえできないんだと痛感させられる
水野とは中学で同じ体育委員になって以来、ずっと仲がよかった。
高校も一緒になれてうれしかったのに、いつも男友達みたいにふざけてばかりだったから、ようやくお互いの気持ちを伝えられたのは転校が決まった終業式だった。
クラスのみんなは遠距離恋愛なんてうまくいかないって言うけど、私たちはこうして顔を見て話せる限りきっと大丈夫、だと思っていた。
でも3ヶ月も経たないうちに、水野からの連絡は途絶えがちになってしまった。
#水野 #17歳 #高校生 #美由紀が寂しいことくらいわかってるのに
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