◆#20◆
敵の見回り二人はおれたちに気づかないまま、勤務時間中とは思えないムカつく雑談を続けた。
「いや予定通りだって」
「来月じゃなかった?」
「あー……お前全然ML読んでねーな。サカグチさんが一昨日、前倒しリリース決めたんだよ。エンジニアの連中は、二日間くらいずっとツメてたらしいよ」
「マジで? ミサイルとかで激アツだったから、全然見てなかったわ~、オッ!」
ロン毛のスマホが振動した。同時に、おれの私用スマホも胸で振動した。おれは心臓が止まりそうになった。幸い、同時に鳴ったので、気取られることはなかった。
だがすぐにアドレナリンが湧き出し、変な脂汗がダラダラと流れてきた。一般的な通知は確かに全部切ったはずだ。許可したのは、本当にヤバイのとか、ロイターの速報だけ。おい、何が起こったんだよ。今鳴るって、Jアラートくらいだろ。だがおれは拳銃とブリーフケースを握り、スマホ画面が見れない。