◆#19◆
「端子、どれでもいいのか?」
おれは額の汗を拭いながら聞いた。メインフレームの背面端子には、USB端子がいくつも開いている。
『どれでもいいよ』
スーッ、ハーッ。おれは深呼吸を行いながら、人差し指と親指でマニピュレータのようにUSBメモリの端を掴んだ。奥野さんが銃を構えておれの背後を守り、万が一に備える。おれと奥野さんは目配せし、小さく頷いた。おれは息を止め、狙いを定めて、ゆっくりとUSB端子にそれを挿入してゆく。この作業はいつも心臓に悪い。頼む、ちゃんと動作してくれよと祈りながら、おれは最後までUSBメモリを押し込んだ。
完了。そのまま10秒静止する。異常は起こらない。
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