◆#15◆
「おっと、ソーシャルだったな」
おれは我に帰り、自由に憧れた檻の中の獣みたいな目つきで、獲物を探した。最初のシマに目当てのものは無かったが、鉄輪のナビに従い、次で早くも発見することができた。
『二歩下がって』
「OK」
『もうちょっと右向いて』
インカムに内蔵された小型カメラから、微かなフォーカス音が聞こえた。夢中で賃貸情報HPを閲覧している社員の肩越し、モニタに貼られたソーダアイスみたいな色の付箋をズームアップしているんだろう。こういうのは一人か二人は絶対にやらかしている。
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