◆#11◆
装着が終わると、装備の指差し点検が始まる。おれが最初に指差し役となり、奥野さんは前習え姿勢のまま、90度ずつ右回りに回転してゆく。淡々としたルーチンだが、まあ、やった方がいいのは間違いない。井上のチームは省略していそうだな。奥野さんの装着作業は手慣れたものだ。初めての社内調整の時点で、特にこうした現場作業に関して、おれが教える必要のある事など、正直ほとんど無かった。
ホルスターに差し込むのは、サイレンサーユニット着脱可能なオートマチック拳銃だ。弾丸は9mmが19発。三点バーストとフルオートの射撃が可能。グロック18Cを素体にアレンジされ、3Dプリンタでプリントアウトされているから合法だ。銃身は合成樹脂製だが、問題なく使用に耐える。T社の敷地内で使う分には、警察機構からお咎めもない。これを一丁ずつ、左右のショルダーホルスターに差し込む。銃口が下だ。
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