WANIMAの笑顔が重い

昨年末の紅白歌合戦に出場、auのCMに曲が採用され、オリコンのアルバム週間チャートで1位を獲得するなど、注目度を上げているバンド・WANIMA。え、だれだっけ?と思った人も、イラストの笑顔を見れば思い出すかもしれません。そんなWANIMAの笑顔と、笑顔を受け入れられない人について、武田砂鉄さんが考察します。

前に前に前に上に上に

音楽が、本や映画や演劇と異なるのは、「嫌なら、読むなよ、見んなよ」と切り捨てられない点である。つまり、WANIMAのファンは、私に対して「嫌なら、聞くなよ」とは言えない。街を歩いていれば、コンビニで立ち読みしていれば、CMを見ていれば、彼らの音楽が耳に入ってくる。不特定多数の大衆に撒けるのは音楽の強みでもあるが、暴力にもなる。代表曲「ともに」で連呼される「前に前に前に上に上に」に象徴されるような、何気ない毎日や大切な日々を腕力で肯定し続ける彼らの楽曲は、その力こぶに勇気をもらう人にとっては頼もしい存在だけれど、力こぶで殴られていると感じる人にとっては恐怖にも変転する。

人の孤独に挨拶もなしに入り込んで、みんな一緒だよねと同意を強要されることを何よりも嫌う性分なので、細かいことはいいから笑おうよと、とびっきりの笑顔を向けられると、自分という土台が崩れそうになる。私は、四六時中不機嫌そうな顔をして歩いているが、不機嫌そうな顔で歩く、というのが、歩くための絶対条件になっているのだから、歩くなら笑顔で歩こうぜ、というアドバイスは、私に対して、歩くな、と命令しているに等しい。コンビニでゴシップ誌を複数冊読みながら、彼らの「やってみよう」という曲を聞いたが、「倒れるなら前に倒れよう」と告げた後に続く「やってみよう」の連呼を聞かされると、持ち前の邪心で後ろに倒れようとするものの、品出しをしている店員さんに迷惑がかかりそうなのでやめておく。

とにかくずっと笑顔

WANIMAについて知らない人でも、イラストに書かれた笑顔を見れば「ああ、彼らか」と認識できるはず。「WANIMA」と入力して画像検索すると、笑顔じゃない写真を見つけるために10スクロールくらいする必要がある。とにかくずっと笑顔だ。石田ゆり子のエッセイ『Lily』を読むと、毎夜、微笑みながら寝るように心掛けているそうで、それは、寝ている時の表情が顔の筋肉の癖になると、美容の先生が教えてくれたからなのだという。WANIMAは笑顔で寝ているのだろうか。

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日本の気配

武田砂鉄
晶文社
2018-04-24

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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playthehope この記事読んだときに、あっ!となった。https://t.co/F5TTEHD7Ko 12ヶ月前 replyretweetfavorite

LuNarcisse4450 @hsm_0715 横から失礼します。 この記事みたいなことおっしゃりたいですよね? https://t.co/w7BsNWEt3J 約1年前 replyretweetfavorite

RmDocumentation |武田砂鉄 @takedasatetsu |ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜 これ最高。わかりすぎる。 https://t.co/i01IJLyRbH 約1年前 replyretweetfavorite

simesqba https://t.co/nVaea8z9Fc 約1年前 replyretweetfavorite