女子は舌の動きにまで流行を取り入れるのか

人と接している時にふっと感じる、小さな小さな違和感。今のその表情は一体……? そのしぐさにはどんな意味が……? ブログ「真顔日記」が人気の上田啓太さんによる、人間観察の記録です。今回は、ある時期を堺に爆発的に広まった舌の「表情」に注目していきます。

仕草やポーズには、さまざまな文化的意味がある。たとえば写真を撮るときに、くちびるの隙間から舌をチョロッと出す。若い女子に多い動きである。ある時期をさかいに爆発的に広まった。
はじめてあれを見たとき、私は本当におどろいた。女子はベロの動きにまで流行を取り入れるのかと思ったからだ。私にとって、舌というのは食物を味わうために使用する器官であり、流行と無関係にあるものである。しかし、女子はそれすらも流行の動きを採用する。

もっとも、男も舌を動かしながら写真に映ることがある。舌をべろんと露骨に出すものである。これは悪そうな人がよくやっている。カメラを向けられるときに、ポーズの一環として、ベロを動かしている。

服装を選ぶように、ベロの動かしかたを選んでいるのか。ベロをちょろっと出す場合、「かわいらしさ」や「こどもっぽさ」が生まれる。べろんと大きく出すと、「ふてぶてしさ」や「悪ガキ感」が生まれる。

こうした出来事によって、自分のなかのベロ観(結婚観や宗教観のようなものだと思ってください)が揺らぐ。もしかして、ベロ観をあらためねばならないのか。この社会には、ベロも表情の一部とみなして自在に動かす人間と、食事以外でベロを動かす発想のない人間がいる。そして、この溝が意外と深い。

見知らぬ人間だらけの飲み会に参加することになったとき、メンバーの職種をきくとか、年齢をきくよりも、参加者のベロ観をきいたほうが早いんじゃないか。その飲み会には、ベロを表情の一部とみなして動かす人間がどれだけいるのか? この問いがいちばん参考になる。ベロを自在に動かす人間が大半を占めるなら、私はその飲み会に参加したくない。経験的に、ベロを自在に動かす人間とはあまり話が合わないからである。

食事以外ではベロを一切動かしたくない

面白いのは、自分のなかにない動きをしようとすると、身体に拒絶反応が出ることだ。私は以前、場の流れでしかたなくベロを表情の一部として動かしたことがあるんだが、背中を流れた汗の冷たさは、人生でも一二を争うものだった。肉体の運動としては、ただ舌をちょろっと出しただけなのに、自意識の暴走がすさまじい汗を流してしまう。

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新しい人間観察

上田啓太

街中ですれ違った人や、牛丼屋で隣り合わせた人、最近知り合った人から長い付き合いの友人まで、誰かを「見て」いる時にふっと感じる、小さな小さな違和感。今のその表情は一体……? そのしぐさにはどんな意味が……? ブログ「真顔日記」が人気の上...もっと読む

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