やらない理由

人に金は貸したくないが、貸せる金もないのはもっと嫌【No.46】

多くの人が嫌がる、人にお金を貸すという行為ですが、これまでの人生で一度も「お金を貸して」と相談されたことがない場合、誰からも頼られない=寂しいと感じてしまう人もいるようです。貸したくはないが、頼られもしないのはなんか……。これから先の人生でもしこんなモヤモヤしたジレンマに悩まされる日がきたら、カレー沢先生のこのコラムを思い出してください。書籍『やらない理由』も好評発売中!

今回のテーマは「人に金は貸したくないが、貸せる金もないのはもっと嫌」だ。

いいじゃないか、人に貸すための金などなくて。まず貸す金がないと、悩まなくていい。金があるから「貸すか貸さざるか」の選択を迫られるのであって、貸すものがなければ選択の余地すらない。

ここで、自分が借りてまで人に貸すというのであれば、釈迦、もしくはバカであり、また別のステージの話だ。そんな性格では、今世は辛いことだらけだろう。しかしそれだけ徳を積めば、来世はマヌルネコとかになれるはずなので、悲観せずクソのような現世を走り抜けて欲しい。

そもそも、金がなかったら「金貸して」と言われることすら少ない。借りる側だって、貸してくれそうな奴、つまり金に余裕がありそうな奴を選んで借りにいくはずだ。いかにも金がなさそうな自分に借りに来た、という場合は、もはや「闇金ウシジマくん」にも断られるレベルなので、貸すのは絶対やめた方がいい。渡すとしたら「香典」という意味でだ。

また金を持っていそうでも、相手が竹内力(「ミナミの帝王」ver.)みたいだったら、金を借りようとは思わないだろう。つまり、金を持ってそうかつ、借りやすい、人が良さそう、面倒見が良さそうな奴のところに行くのである、むしろ、持ってなさそうでも人が良い奴なら貸してくれそう、と思って行くかもしれない。つまり良い意味でも悪い意味でも人望があるタイプである。

逆に、金を持っていそうでも「ケチ」「冷たい」「6時間ぐらい説教をされて結局貸してくれなさそう」「ド直球に体を要求してきそう」というイメージを持たれていたら借りに来る人間は少ないはずだ。

これをテーマに当てはめると「人が金を借りに来るのは嫌だが、人望がないのはもっと嫌」 となる。
つまり、今まで欠点と思われていた「金がない」「人望がない」が大きな利点であると証明された。この二つがないと「変なものも寄って来ない」のである。

「金がある」「人望がある」「モテる」この人として優れているとされるタイプには「人が集まってくる」という共通点がある。それは良い事かもしれないが、集まってくる人間が全員良い人とは限らない。むしろ集まってくる人間の分母がでかくなるほど、変なのが混ざる確率が高くなる。

「純粋に変な人」ならまだ良いが(何故か「純粋に変な人」にやたら好かれる人間が存在する)その中には「悪い人」もいるかもしれないし、さらに「悪い上に頭が良い人」の場合もままある。

世の中には、成功したのに、その後逆V字転落という大技を披露してしまう人がいる。そういう人に「何故、一生食えるだけの成功をしたのに、そんなウルトラCが可能なのか」とヒーローインタビューをすると「上手い話に乗り続けてたらこうなった」と答える人が結構いる。成功したことにより、悪くて頭のいい人がたくさん集まってきた結果である。

このように、キレイな花にはキレイな蝶々しか寄って来ない、などということはなく、害虫も寄ってくるし、引っこ抜こうとする奴だって現れる。 人間、ただ魅力的なだけではダメであり、魅力があればあるほど、次は「人を見る目」を求められるのである。それがないと、せっかくキレイな花になれても、雑草より不幸になる可能性がある。

その点、金や人望などの魅力がないと「何も寄ってこねえ」という楽さがある。 人はそれを「孤独」と呼ぶかもしれないが、昨今「孤独はそんなに悪いことじゃない」と再評価されているし、寄ってくる烏合の衆に、対応、選別、時に騙され傷つき、ちぎっては投げ、する時間を考えると、そこまで大勢に慕われる必要はないのでは、と思える。

しかし、人に金を借りようとする人間が全て「君、ウシジマくんに出てたよね?」という人材というわけではない。人はどんなに真面目にやっていても、金に困るときは困る、特に今の世の中、ちょっとつまずいいただけでいとも容易く困る。自分の大切な友達や親族がそうなることも十分考えられる、それが自分を頼ってきた時に貸す金がないがない、というのは確かに嫌かもしれない。

しかし、それが自分が金を貸すことで全部解決する、というなら良いが、大体その場しのぎ、または事態を悪化させるのではないか。

大事な人が金を借りにきた時、貸す金がないことを嘆くより、絶対他にできることがあると思う。

この時代を生き抜くサバイバルブック!

やらない理由

カレー沢薫
マガジンハウス
2017-11-30

この連載について

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カレー沢薫

「エッチはしたいが、付き合うのは嫌」。多かれ少なかれ誰もが抱える他人には打ち明けづらい虫のいい話。OL兼漫画家・コラムニストのカレー沢薫さんが挫折と諦めを肯定、それが正しいことだと示す当コラムで、スカッと爽快なメンタルヘルスを目指しま...もっと読む

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コメント

marekingu #スマートニュース 2日前 replyretweetfavorite

silverqueenand 最初にコケる展開からマジ真理卍にもってくるカレー沢先生の真骨頂。 4日前 replyretweetfavorite

gue5_u5 『大事な人が金を借りにきた時、貸す金がないことを嘆くより、絶対他にできることがあると思う。』ヘッドシェイクした。 4日前 replyretweetfavorite

ezoshika_dr 頷きすぎて首もげて転がり落ちるところだった。この首は剥製にしてください。 4日前 replyretweetfavorite