父へ

無頼のハードボイルド作家である樋口毅宏さんが、いつのまにか専業主夫になってしまった男の子育て日記『おっぱいがほしい』。去年末にcakesで掲載し、そのファンキーな内容が話題となりました。現在、cakesでは続編(書き下ろし)を準備中です。続編がスタートするまでの間、『おっぱいがほしい。』の未掲載分をお楽しみください。

 この頃、父のことをよく考える。

 五十四歳で逝った父のことを。

 父は優しい人だった。働き者だった。

 どうしてあんなに温厚な人だったのか。

 サービス精神が旺盛で、いつもみんな笑わせようとしていた。

 僕は一文がとても愛おしい。そして思う。

 父も僕に、同じような気持ちを抱いてくれていたのかと。

 父に抱きしめられた記憶はない。

 かといって父が冷たかったとは思わない。

 父の時代の家族像と自分の時代のそれとは大きく違う。

 日曜日は決まって近所のサウナとパチンコ屋に連れて行ってくれた。

 子供の愛し方がわからなかったが、父なりの愛情表現だったのだろうと思う。

 父は自分の父に、つまり僕の祖父に殴られて育った。

 父はよく言っていた。

「だから自分は絶対に子供を叩かない」

 それでも、父は僕に二度、手を上げたことがある。

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この連載について

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おっぱいがほしい!—男の子育て日記

樋口毅宏

子育ては、この世で一番ハードでクリエイティブなワークだ! 無頼のハードボイルド作家である樋口毅宏さんが、いつのまにか専業主夫になってしまった男の子育て日記『おっぱいがほしい』を特別掲載します。 美人東大卒弁護士という華やかな肩書きと裏...もっと読む

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