名刺ゲーム

海に飛び込むペンギンは、本当は突き落とされているだけだ

テレビ局に入ってくる奴というのは大体、学生時代の勝ち組が多い。しかし神田は、クイズ番組出場の経歴を手札にして、運よく入社できただけの冴えない奴だった。育ててくれた制作会社の上司がいたから続けてこれた。他人への恩は大事。だが、誰かを犠牲にしなくては仕事なんてできない。いま目の前にいるのが、俺に何かを奪われた人、だとしたら……。心に刺さるセリフが満載の『名刺ゲーム』!

—Stage3
1 神田達也

 テレビ局に入ってくる奴というのは、大体学生時代の勝ち組が多い。エンコで入った奴も多いし、スポーツで活躍していた奴も多い。青春時代を十分に謳歌し、恋愛経験も多い奴が結局、入社していたりする。俺のように、学生時代、一番付き合いたかった子と付き合えるわけでもなく、ドラフト七位くらいの女の子と妥協の上での恋愛をしていた奴はむしろ珍しい。日向か日陰かで言うと、確実に日陰の大学生活。テレビ局とラジオ局を全局受けて、奇跡的に今の局だけ受かることができた。大学時代に溜めていた運を一気に使うことができた気がした。

 なぜ自分が受かったかと分析すれば、クイズ研究会に所属していて、大学生が参加するクイズ番組で活躍を見せたのが良かったのかもしれない。最後の早押し問題、「蚊が好むといわれる人間の血液型は?」で見事、俺は正解した。

 テレビに出て少しはモテるかと思ったけど、クイズオタク臭に変わりはなかったのか、モテる理由にはならなかった。だけど、就職ではあの経歴がちょっとした名刺になったのかもしれない。世の中、無駄なことなんてないのだと改めて思うよね。

 テレビ局に入ってすぐに同期との飲み会があった。大学時代だったら絶対俺とは仲良くならなそうな日向組の勢いはすごかった。全員に酒を勧め、大学でやりまくっていたんだろう一気コールで酒を飲ませて潰していく。二軒目に移って、やっかいなことにテキーラが出てきた。そして佐々木が俺にクイズを出題した。日サロで日焼けし、黒い肌に白い歯が浮き立っている男、佐々木。クイズは同期の女の子たちの経験人数を当てるというゲスなものだった。でも飲みの席ではゲスな話題がどんなおつまみよりも輝く。

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名刺ゲーム

鈴木おさむ

家族も部下も切り捨て、人気クイズ番組のプロデューサーまで上り詰めた神田達也。ある夜、息子を人質にとられた神田は謎の男から「名刺ゲーム」への参加を命じられる。だがそれは、人間の本性を剥きだしにしていく《狂気のゲーム》だった――。WOWO...もっと読む

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