河邉徹
昔、おばあちゃんが夢工場に会いに行った人とは
【過去の夢⑪】
夢の中で会ったおばあちゃんも、昔、この夢工場に来て、会いたい人に会いに行ったという。おばあちゃんの話は本当だったのだ。そして、自分がずっと気になっていた、おばあちゃんが渡そうとしていた贈り物について聞いてみた
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>

イラスト:堀越ジェシーありさ
麻美は実家のリビングに立っていた。夢工場に繋がっていた扉はもう消えている。夢の中特有の空気感にぼんやりとしながらも、麻美は急いで日付を確認した。いつもテレビの上にかけてあったカレンダーを見ると、三年前の四月になっている。
「私が東京に行って……一ヶ月後の実家?」
時計を見ると、昼の二時を回る頃だった。父も母もいないところを見ると、二人とも仕事に行っているらしい。
耳をすますと、アキコの部屋の方からテレビの音が聞こえる。麻美はゆっくりとそちらへ歩き出した。短い廊下を抜けて、部屋へと近づいていく。
アキコの部屋の扉は開いていた。覗いてみると、ベージュのカーディガンを着た後ろ姿が、椅子に座ってテレビを眺めている。
「おばあちゃん」
思わず呼びかけてしまった。
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この連載について
河邉徹
WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の
〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。
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著者プロフィール
1988年6月28日、兵庫県生まれ。関西学院大学 文学部 文化歴史学科 哲学倫理学専修 卒。ピアノ、ドラム、エレクトリック・ベースの3ピースバンド・WEAVERのドラマーとして2009年10月メジャーデビュー。バンドでは作詞を担当。
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