イラスト:堀越ジェシーありさ
「……名前などありません。管理人、とお呼びください」
あくまで名前は教えてくれないらしい。しかし機械的な口調で話しているのも、意識してそうしているように見える。本当はもっと感情豊かな人なのかもしれない。ぐいぐい攻めたら、意外と仲良くしてくれるタイプかも、と麻美は思った。
「私最近、亡くなったおばあちゃんの夢をよく見るんです。夢の中ではいつも喧嘩をしてしまっていて、夢だってわかっているのに止められないんです」
うんうん、と頷きながら管理人は聞いている。
「おばあちゃんが亡くなる前に、私ひどいこと言っちゃって……そのままだったんです。多分そういう後悔の気持ちがあるから、夢に出てくるんだと思うんですけど」
管理人は話を聞きながらペンを走らせている。
「あの、ここに来れば、会いたい人に会えると聞きました。合ってますか?」
麻美はアキコが昔、話していたことを思い出しながら尋ねた。
「会いたい人に会える。確かにそういう力を夢工場は持っています。そのためには、麻美さんが夢の仕組みを知る必要があります」
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