イラスト:堀越ジェシーありさ
扉の先は、幅が狭く天井の低い通路が続いていた。床や壁がじんわりと光っていて、麻美は以前デートで行った科学館の、宇宙のコーナーを思い出した。進んで行くと、また入ってきた時と同じ青い扉があった。麻美はゆっくり扉を開き、隙間から中を覗いた。
天井の高い、不思議な部屋だった。部屋全体が薄いピンクで統一されており、暗い通路とは真逆で、どことなく安心させてくれる雰囲気がある。
「お……お邪魔しまーす」
誰にも聞こえないくらいの小さな声で言いながら、麻美は部屋に足を踏み入れた。
左の壁には幅が一メートルはあるだろう、大きな絵が飾られている。ジャングルの中で女性が寝そべっている油絵で、シュールな迫力を感じる。
部屋の中央には存在感のあるベッドが一つ置いてあり、椅子がベッドのこちらと向こう側に一つずつ置かれている。絵が大きく、天井が高く、部屋も広いので、一瞬自分が小さくなっている夢なのかと思ったが、ベッドや椅子は普通のサイズだ。
「こんにち……こんばんはー。誰かいませんか?」
夢の中だから、昼じゃないよね、と思い麻美は言い直した。
「こんばんは」
静かな声が返ってきた。湖の水面を優しく揺らすような、そんな声だった。さっきは気づかなかったが、女性がベッドの向こう側に立っていた。
薄いピンク色の、宇宙服のような変な服を着ているが、その女性が纏っている不思議な空気感と合わさって、なんだか可愛く見える。年齢は同い年くらいのようにも見えるが、実際のところはわからない。もっと上だと言われたら、きっと信じるだろう。
「あのー、すみません。初めて来たんですけど、ここはどこ……え!」