亡くなったおばあちゃんに、言えなかった言葉

【過去の夢⑨】
部屋から出ると、両親の寝室の扉の隣にもう一つ見たことのない扉を見つけた。「ラムレス」と書かれたその扉を開けて入っていくと、そこには知らない世界が広がっていた
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>


イラスト:堀越ジェシーありさ



 扉の先は、幅が狭く天井の低い通路が続いていた。床や壁がじんわりと光っていて、麻美は以前デートで行った科学館の、宇宙のコーナーを思い出した。進んで行くと、また入ってきた時と同じ青い扉があった。麻美はゆっくり扉を開き、隙間から中を覗いた。

 天井の高い、不思議な部屋だった。部屋全体が薄いピンクで統一されており、暗い通路とは真逆で、どことなく安心させてくれる雰囲気がある。

「お……お邪魔しまーす」

 誰にも聞こえないくらいの小さな声で言いながら、麻美は部屋に足を踏み入れた。
 左の壁には幅が一メートルはあるだろう、大きな絵が飾られている。ジャングルの中で女性が寝そべっている油絵で、シュールな迫力を感じる。
 部屋の中央には存在感のあるベッドが一つ置いてあり、椅子がベッドのこちらと向こう側に一つずつ置かれている。絵が大きく、天井が高く、部屋も広いので、一瞬自分が小さくなっている夢なのかと思ったが、ベッドや椅子は普通のサイズだ。

「こんにち……こんばんはー。誰かいませんか?」

 夢の中だから、昼じゃないよね、と思い麻美は言い直した。

「こんばんは」

 静かな声が返ってきた。湖の水面を優しく揺らすような、そんな声だった。さっきは気づかなかったが、女性がベッドの向こう側に立っていた。
 薄いピンク色の、宇宙服のような変な服を着ているが、その女性が纏っている不思議な空気感と合わさって、なんだか可愛く見える。年齢は同い年くらいのようにも見えるが、実際のところはわからない。もっと上だと言われたら、きっと信じるだろう。

「あのー、すみません。初めて来たんですけど、ここはどこ……え!」

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夢工場ラムレス

河邉徹

WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の 〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。 ...もっと読む

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コメント

kwb_wvr 彼女もついに管理人と出会って、夢工場のことを教えてもらいます。 おばあちゃんの話していた物語は本当だったのでしょうか…。   https://t.co/VW8TmBdN5t #夢工場ラムレス #WEAVER #小説 6ヶ月前 replyretweetfavorite