イラスト:堀越ジェシーありさ
麻美はその夜、家に帰っても職場のことを引きずったままだった。いつもなら林田から直接電話が来てもおかしくない。電話が鳴らないことで、逆に事が重大なのではという気持ちになる。
いつも他人には理解できない尺度で、人を怒ったり褒めたりする人だ。メイクの腕がいいのはわかるが、人の上に立つ者としてはかなりの欠陥があるように思う。だいたい、占いでお店の進む道を決めないで欲しい。
一通り心の中で愚痴をこぼしたところで、ベッドの上で目を閉じると、またアキコのことを思い出していた。
——夢工場。
問い合わせ先は知らないが、やっぱり気になる。
昔アキコが話してくれたストーリーを、ぼんやりと思い出した。
本当にあるのかな。もし本当に存在するなら、行ってみたい。こんなことを想像すること自体、小学生の頃の自分と全く変わってなくて、麻美は少し可笑しくなった。
でも、今は会いたい人がいる。たくさんのお話を教えてくれた、おばあちゃんに会いたい。
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