焼き場で拾う骨
骨はその形によって、「長骨」(「上腕骨」や「大腿骨」)、「短骨」(手根骨や「椎骨」)、「扁平骨」(「前頭骨」や「胸骨」)、「混合骨」(前三者の特徴を合わせ持つもの。「肩甲骨」など)、「含気骨」(「上顎骨」など空洞の多いもの)に分かれます。
骨にはさまざまな凹凸があり、関節を形作る膨らみ、筋肉が付着する突起、神経や血管が通る溝などがあります。
人間の骨のうち、もっとも大きいのは大腿骨で、長さは大人で40~45㎝。もっとも小さいのは耳小骨のひとつであるあぶみ骨で、長さは3㎜前後。大腿骨は身長の約四分の一とされるので、ばらばら死体の場合、身長を割り出すときに目安とされます。
大腿骨の上の端は、「股関節」につながっていますが、この部分は「大腿骨頭」とよばれ、きれいなボール状で、身体の中でもっとも滑らかな面になっています。私は麻酔科に勤務していたとき、整形外科の手術で何度か見ましたが、取り出された生の大腿骨頭は、真珠色の光沢を放ち、神々しいほど美しいものでした。
大腿骨頭はいったんくびれて、「大転子」という膨らみから、「大腿骨体」という細長い部分につながります。その形は武器にも通じる凶暴さを秘め、「膝しつ関かん節せつ」につながる下の端も、末広がりで握るのにちょうどいい形です。スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』(1968年)で、類人猿が謎の物体モノリスに触って知恵をつけ、最初の武器として使うのも大腿骨でした。
焼き場で骨を拾うとき、〝仏さん〟と称する骨がありますが、これはのど仏ではありません。のど仏は甲状軟骨という軟骨なので、火葬では残りません。
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