皮膚の構造
最後の講は、身体を包み、支え、動かすシステムについてです。
「皮膚」は全身の外側を覆っているひとつながりの膜で、まぶた、鼻、口、肛門と性器で「粘膜」とつながっています。
皮膚と粘膜のちがいは、簡単にいえば乾いているか濡れているかです。粘膜は、広い意味で「粘液」を分泌します。
皮膚は三層構造になっていて、外側から「表皮」「真皮(しんぴ) 」「皮下組織」に分かれます。
表皮はさらに四層に分かれていて、内側から順に「基底層」「有棘層(ゆうきょくそう)」「顆粒層(かりゅうそう)」「角質層」とよばれます。厚さは四層合わせて約0・2㎜。基底層は表皮細胞を作る一層の膜で、新しい細胞はそこから順に押し上げられていきます。新しい細胞ができて、角質になって脱落するまでの周期は約28日です。すなわち、我々の皮膚は4週間前にできた細胞で覆われていることになります。
皮膚の色を決める「メラニン細胞」も、基底層に存在します。メラニン色素は紫外線を吸収するので、紫外線の強い地域では濃くなる傾向があります。
先天的にメラニン色素の欠けているものを「アルビノ」といい、動物では白蛇や白虎が有名ですが、ペンギンでも全身が白くなります。手塚治虫の漫画『ジャングル大帝』に登場するレオやパンジャもそうです。
真皮は厚さが約2・0㎜で、コラーゲンや弾性線維からなり、《表‒11》の組織が含まれます。皮脂の出口が垢などで詰まると、「粉瘤(アテローム)」という腫れ物になります。頬や背中、首筋などにこれができている人をよく見かけます。
見分け方は、膨らみの中央に詰まった皮脂の出口が青黒く見えることです。まわりから押し出すと、中に溜まった粥状の皮脂が出てきますが、これはドリアンそこのけの猛烈なにおいがします。
粉瘤が化膿すると、赤く腫れて痛みます。膿が出ると治りますが、粉瘤そのものは治りません。治すには皮脂腺の分泌膜を破らないように摘出しなければなりませんが、化膿していると、分泌膜が癒着しているので破れてしまいます。分泌腺が残ると再発します。化膿していないときは、生活に支障がないので、放っておく人が多いようですが、切るなら、面倒がらずに化膿する前がお勧めです。
皮下組織は主に脂肪細胞からなります。その役割は、クッション、保温、エネルギーの貯蔵などです。厚さは、耳の後ろのように薄いところでは2・0㎜前後ですが、腹部ではときに10㎝を超えます。太った女性やビール腹の男性の腹部の手術では、手術の最後に傷を縫うのに苦労します。脂肪が分厚くて、針が十分にかからないからです。
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