世間では「離乳食は手作りするのが親の愛情」というムードが漂っている。「レトルトよりも手作りの方が優れている」と信じて疑ったことのない母親が多い感じがするし、市販のベビーフードをあげることを良しとしていない人が世の中にたくさんいることはネットを開くだけでもビンビン伝わってくる。
ママになったタレントたちのSNSでは離乳食を手作りする様子が投稿されていて、読者から離乳食にまつわる質問があれば丁寧に答え、「離乳食づくり大変だけど、お互い頑張りましょうね!世の中のママさん尊敬します!」とエールを送ったりしている。
私自身は離乳食を手作りする様子を投稿したことがないのだけど、それでも「離乳食のレシピを教えてください」「どんな分量で作ってますか?」という離乳食にまつわる質問は定期的に届いていて、その全てが離乳食を手作りしていることが前提になっている。
さて、初めて公言する。
息子の離乳食が始まって1ヶ月半が経った。しかし私は、離乳食を手作りをしたことが一度もない。まだ、裏ごしをしたことがない。
というのも、離乳食を手作りした方がいい理由が一つも浮かばない。むしろ手作りすることのデメリットと、レトルトを使うことのメリットの方が、どんどん浮かぶ。
離乳食の目的は「栄養補給」ではない
それらを語るにあたって、「離乳食とは何なのか」という定義について先に語っておきたい。
まず、今の息子にとって離乳食は"栄養を摂るための食事"ではない。
これは成長に伴って変わっていくことだから「生後6ヶ月半の現時点では」ということなのだけど、離乳食が始まってしばらくの間は、赤ちゃんにとっての主な栄養源は引き続き母乳やミルクであり、栄養補給の点で言えば離乳食は食べても食べなくても大丈夫な位置付けにある。
では、離乳食の役割とは何なのか、と言えば、食べる練習。スプーンに慣れることや、モグモグする習慣を身につけるために、赤ちゃんは離乳食を食べる。これは私の意見ではなく一般論。
そしてここからは私の意見。私が思うに、離乳食の1番大事な役割は「食べることを好きになるための経験」だ。
「食べ物って美味しい!」「食べるって楽しい!」「世の中にはたくさんの美味しい食べ物があるんだなぁ」「ごはんの時間、大好き!」
息子の中にそんな気持ちが芽生えますように、と思いながら、私は毎日離乳食を与えている。
レトルトのほうが優れている理由
さて、そんなことが大前提にあるとして、ここからは私がレトルトを推す理由について語ってみる。
まず「レトルトの方が絶対的に安全でしょ」と思う。
赤ちゃんにハチミツがNGなことは有名で、私を含め多くの人が知っているけれど、ハチミツ以外にも何かそういう毒になるものがあったら、と考えると怖い。
情報を完璧に把握する、というのは何事においても困難なことだ。自分としては念入りに調べてすべて分かったような気になったとしても、すべて分かっている可能性などない。
「その角度からは調べてなかったわ!」的な盲点は必ず残るし、「まさか、そんなところに…!」的な落とし穴が必ず開いている。だって、人間だもの。
個人の「万全」は信用ならない。そういう意味でレトルトは、企業が万全を尽くしているから、だいぶ安全度が高い。
市販のベビーフードには、赤ちゃんが食べちゃいけないものが含まれている可能性が、まずない。手作りの離乳食と違って、商品は安全性を厳しくチェックされている。とくに長年第一線で活躍している老舗のものなら、かなり信頼できる。
この苦情社会において、発売のハードルが高いことは簡単に想像がつくし、とくにベビー関連の商品は、ちょっとでも問題が起きたらモンスターペアレントたちが大騒ぎするから審査が厳しいはずだ。ベビーフードは、そんな難関を突破して店頭に並んでいる。
衛生面で考えても、レトルトは手作りに勝る。家庭のキッチンで工場ばりの無菌を実現するのは、どうしても難しい。そもそも離乳食を作るときに使うような調理器具はどれも細かい凹凸があったり、パーツが複雑だったりして、完璧に洗う難易度が高い。それに、手作業で丁寧に裏ごしをしていたら、ホコリなども入るだろう。
ちなみに、「添加物が気になる」という理由でレトルトに抵抗を持っている人は少なくないと思う。
確かに大人用のレトルトはエグい。パッケージの原材料を見てみると引くほど添加物が記載されている。
けれど、ベビーフードはそうでもない。粉ミルクの方がわけのわからない記載が多いくらいで、瓶詰めのベビーフードの原材料はとてもシンプルだ。仮に手作りをしたとしても調味料を使えばこのくらいの添加物は入ってしまうだろう。(甘みのある食材以外には風味づけ程度の調味料は必要だと思う)
レトルトなら、徒労感を味わずにすむ
それに、これは前回も書いたことだけれど、私は育児においての「徒労感」をできるだけ避けるようにした方がいいと考えている。