実は「マジョリティ」なんていないー浅生鴨×小野美由紀対談

3/7(水)、歌舞伎町ブックセンターにて行われた出版記念トークイベント 「みんなちがって、みんないい?多様性をテーマに語る日本のいま」。
『伴走者』(講談社)を書かれた小説家の浅生鴨さんと『メゾン刻の湯』(ポプラ社)を出版された小野美由紀さんは、SNSやネットで人々の属性が可視化されるようになった今、「マイノリティ性を抱えてない人の方がむしろ少ないのでは」と語ります。 対談第3弾です。

実は「マジョリティ」なんていない

浅生鴨(以下、浅生) 『メゾン刻の湯』にはキャラがたくさん出てくるじゃないですか。

小野美由紀(以下、小野) 大変でした、本当に。

浅生 多様性というものを言うためには、これだけの人が必要なんだろうけども。

小野 登場人物には、マレーシアと日本のハーフの女の子や、義足の男の子や、ジェンダーに関して葛藤を抱えてる10代の子が出てくる。読まれ方によってはあざとく見られるかもしれない。ただ、私の頭の中では「多様性を伝えるためにこういうメンツにしたぞ」って言うよりは、シェアハウスに住んでいた経験から、7人いたらこれくらいの割合でマイノリティと呼ばれる人たちはいるだろうみたいな感じで、スルッと出てきて。
 私が住んでいたシェアハウスにも、アメリカ人の留学生の子だったり、ハーフの女の子だったり、19歳から65歳のおじいちゃんまで本当にバラバラな人たちが一緒くたになって暮らしてたので。これぐらいバラけるのが当たり前だろ、みたいな感覚です。

浅生 マイノリティという括り方がもうすでにメジャーな括り方になっちゃっているから。変な言い方なんだけど、マイノリティと呼ばれる人をトータルしたら、社会で20%近くいるわけで。
 僕が昔作った広告で「30年後の同窓会」だったかな。ひとつの教室にそのクラス出身の人を40人全部入れて、写真を一枚取るとどうなるか、ということをやりました。
 すると、大金持ちになっている人が1人いて、親の介護をしなきゃいけなくて破産寸前の人が2人いて、事故で体に障害が残った人が1人いて、みたいな。統計から分析してどういう人がいるのかっていうことを40人に当てはめて、全員にその通りの衣装を着せてポスターを作ったことがあります。そうするとね、いわゆる平均的な「マジョリティ」と呼ばれる人達って半分もいないんですよね。みんな何かしらあるっていう。

小野 そうなんだ。

浅生 だから実はマジョリティっていないんじゃないのって。思い込んでいるだけで、一個一個比べていくと、「私はすべてにおいて平均である」みたいな人はいないわけじゃないですか。むしろ、多様性っていうよりマジョリティーこそが幻想というか。そんな幻想にぶら下がっていないで、自分の特徴とか特技とか、あるいは苦手なものとかを、早めにわかった方がいいんじゃないのって。
 だって、この会場にいる50人の中にも、それこそ見える障害の人もいるし、見えない障害の人もいるし、たぶんLGBTの方もいらっしゃるだろうし、50人集まっただけでいろんな方がいるわけですよね。だから、あんまり殊更何か気を使わない方がいいというか、逆の意味で気を使うというか。そんな気はしますよね。

小野 そうですね。

浅生 本当に、マイノリティ性を抱えてない人の方がむしろ少なかったり、少ないっていったら乱暴ですけど、本当にマイノリティ性を抱えていない人ってそんなにいっぱいいるかなーとかと思っちゃうし。
 『メゾン刻の湯』にも何か問題を抱えていない人は1人もいないわけじゃないですか。街の人も含めて全員が何か持ってる。そこがリアルだなって気がするんですよね。

片親だからと言う理由で、「父の日」の作文をスルーされたあの日

小野 そうですね。本作は多様性をテーマにはしているし、登場人物一人一人にスポットライトを当てて書いてはいるけど、マイノリティ性に苦しんでる人を書きたかったわけではなくて、マイノリティ性を抱えている人たちが当たり前のように暮らしている風景を書きたかったなっていうのがあります。
 登場人物の戸塚さんも好々爺みたいに書かれてるけど、最後の方ではダメ親父っぷりが明らかにされたりとか。なんかそういう何かしら瑕疵みたいなものがある人たちが集まって、それでも手を取り合って、一緒に暮らしていける図みたいなのが書きたかった。
 いまのクラスの話を聞いてふと思い出したんですけど、私、非嫡出子なんですよ。母はシングルマザーとして私を育ててくれたんですけど、小学校の「父の日」に作文を書かされた時、普通に書いていったんですよね、そしたら先生が「小野さんはいいから」って言って発表の順番を飛ばされたんですよ。

浅生 はあ、なるほど。

小野 「別に一緒に住んではいないけど、存在はしてるんだけどなあ」って子供心ながらにすごく”モニョった”。
 けど最近、Twitterでたまたま流れてきたツイートで、非嫡出子の割合のグラフみたいなものがあって。
 それによると、社会には非嫡出子が2%いるんですよ。2%って50人に1人ですよね。学年に6人は居たわけじゃですか。案外多いな!って驚いたんですよ。子供の頃は父親がいないってことをそれなりに気にしてたので、「言ってよ、早く」って気持ちになったんですよ。もう6人いたらそれって仲間じゃんって。
 だから、そういう自分のマイノリティ性が可視化されて、でも同時にネットやSNSで仲間も探せるようになってきた今の世の中っていいなって思います。

浅生 なんだろうな。網の目が細かくなったというか、解像度が高くなったというか。たぶん30年前に人が集まって一箇所で暮らす物語を書きますってなった時に、『メゾン刻の湯』のようなマイノリティ性のある人たちがそんなには集まらなかったような気がするんですよね。でも、いまリアルに7人集めたら「みんな、何かしら抱えているじゃん」っていうことにきっとなる。ただ、実際にはそんなにマイノリティ性のある人たちの割合が増えているわけではない。
 僕たちの解像度が高くなったというか。ちゃんと見えるようになった。それは凄くいいことだなって。『メゾン刻の湯』を読んだときに「みんな、そうだよね」って思ったんですよ。リアリティがあるなって思ったんです。
 リアルさを追求するための取材はやったんですか?

小野 しました。義足の登場人物を書くために、ウソがないようにしたかったので、生活の中の動作の仕方について知りたかった。座り方ひとつとってもこうだよってことを知りたかったのでそれを聞かせてもらったりとか。
 あとは体験です。住んでいたシェアハウスにチェコと日本のハーフの女の子がいて、その子が「今日、居酒屋で、ハーフの女の子2人で日本酒を飲んでいたら”ハーフなのに日本酒飲むんだね”って言われたんだけど、500回目くらいなんだけど!もっと面白いこと言えや!」って怒ってたりとか。そういう日常の中で聞いていたことが元になってると思います。

来場者からの質問

Q1 どうやってたくさんの登場人物の気持ちを想像するんですか?自分自身の中に、他者が複数いることを感じ取る瞬間ってあるんですか?

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メゾン刻の湯

小野 美由紀
ポプラ社
2018-02-09

この連載について

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浅生鴨×小野美由紀「みんなちがって、みんないい?多様性をテーマに語る日本のいま」

浅生鴨 /小野美由紀

3/7(水)、歌舞伎町ブックセンターにて 「みんなちがって、みんないい?多様性をテーマに語る日本のいま」と題し、小説家の浅生鴨さんと小野美由紀さんの出版記念トークイベントが行われました。NHKにてオリンピック・パラリンピックの担当ディ...もっと読む

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コメント

marekingu #スマートニュース 1年以上前 replyretweetfavorite

b_ksou 【実はマジョリティなんてない】 「一個一個比べていくと、「私はすべてにおいて平均である」みたいな人はいないわけじゃないですか。むしろ、多様性っていうよりマジョリティーこそが幻想というか。」(記事引用) https://t.co/XonrO8LZdw 1年以上前 replyretweetfavorite