子育てを外注するという戦略
日本社会で「はたらく女性」が抱える悩みは、仕事と子育ての両立がものすごくむずかしいことです。しかしその一方で、子どものいない女性は、男性と対等にはたらくことができる程度には日本の会社は「平等」です。
そう考えれば、この問題は「子育てを外注する」ことで解決します。
「そんなバカな!」と思うかもしれませんが、これはべつに特別なことではありません。もっともよくあるパターンは、実家の両親に子育てを任せてしまうことです。
離婚して子連れで実家に戻り、法科大学院に通って弁護士になった女性がいます。そんなことができたのは、実家の両親が子育てをすべて引き受けて、娘を応援してくれたからです。
結婚しているときは彼女は専業主婦でしたから、子どもを実家に預けて法律の勉強をすることなど許されるはずはありませんでした。実家の両親にしても、婿(娘の夫)がいるのに家庭のことに口出しするのははばかられたでしょう。
ところが、結婚生活が破綻したことですべての障害がなくなってしまいました。
実家の両親は、だれに遠慮することもなく、孫の世話を焼くことができるようになりました。かわいい娘と、もっとかわいい孫が、思いもよらぬ出来事で戻ってきてくれたのです。
けんめいに勉強した彼女の努力があったのはもちろんです。でも、「専業主婦から弁護士へ」というサクセスストーリーのいちばんの理由は、離婚によって子育てを実家の両親に外注できるようになったことでしょう。
こうしたケースは、ほかにもたくさんありそうです。「他人」である娘の夫はどうでもよくて、娘と孫といっしょに暮らしたいと思っている裕福な祖父母は、じつはいっぱいいるでしょうから。
家政婦はアジア各国では当たり前
実家に気軽に子どもを預けられないひとは、どうすればいいのでしょうか。
その場合は、お金を払って乳母や家政婦を雇う、という方法が考えられます。
こんなことをいうと、「そんなことできるわけない!」と、たちまち怒られそうです。日本だと家政婦は時給3000円もかかり、そのうえ週2回、1日3時間くらいしか来てくれません。それも平日昼間なので、夜の残業にはまったく役に立ちません。
「乳母に子どもを育てさせる」などという家は、日本では上流階級でも絶滅してしまいました。そんなことをいいだしたら、アタマがおかしくなったと思われそうです。
でもこれは、日本や欧米など先進国だけの話です。資産1000億円のシェリル・サンドバーグが子育てに大奮闘するのは、いいか悪いかは別として、「子どもは両親が自分たちの手で育てなければならない」という強い道徳規範が社会にあるからです。
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