13 同・廊下(翌日)
多満子、書類を抱えて歩いている。
バランスを崩して書類を落とし、拾う。
多満子モノローグ「人生に奇蹟は起きない。ある日突然王子様が出現することなど……」
通りかかった男性が手伝ってくれた。
多満子「ありがとうござ……(相手の顔を見て、硬直)」
スーツ姿ではあるがピアスがオシャレなその美男子は微笑んで、重役に社内を案内されながら去って行った。
多満子「……(はっと壁の掲示板を見る!)」
掲示板に、『ついに卓球部発足!実業団に殴り込み!』なるチラシ。
14 同・庶務課(日変わり)
社員たちの前で挨拶しているユニフォーム姿の卓球部員(男子2名、女子2名)。その先頭で自己紹介している江島晃彦(28)。
江島「江島晃彦です。さらなる飛躍を求めてこの地へ参りました。目標は勿論、全国制覇。そして世界を獲ることです。よろしくお願いします!」
ざわついている女子社員たちの中で、ぽかんと口を開けて見ている多満子。
多満子「……(頬をつねってみる)」
15 同・イベントスペース(日変わり)
江島たち卓球部の大会優勝祝賀会が開かれている。
舞台袖で、チアリーダーの恰好をしている多満子たち庶務課女子。
多満子「(恥ずかしい)庶務の仕事かな……」
沙希「行くよ!」
「わー!」と出てゆく。
多満子たち「優勝おめでとー!」
出て行った勢いのまますべって豪快にダイブし料理をぶちまける多満子。
× × ×
終わって解散後、一人テーブルを片付けている多満子。
そこに、誰かが手伝いに来てくれた。
江島「一人で大変ですね」
多満子「誰かがやらないと、明日使う人が……」
江島が手伝っている。
多満子「あ、あの、いいです、腰でも痛めたら大変なんで」
江島「目の前で女性が力仕事してるの無視できないですよ。お名前何でしたっけ?」
多満子「庶務の富田です……富田多満子……」
江島「じゃあ多満ちゃんだ(と笑いつつ、ふと思い当たったように改めて多満子を見る)」
多満子「……(思わず顔を伏せる)」
江島、執拗に多満子の顔を覗き込む。
多満子、観念して微笑む。
江島「やっぱり。(多満子の顔についていた物を取る)スイカの種だ」
多満子「……」
笑い合う多満子と江島。
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