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4月になりました。
いかがおすごしでしょうか。新年度、いろんなことが新しくなる時ですから、もしかして寂しくなったりなんかしてないかなあ、って、あなたのことを考えています。
読者の方から投稿を募集して書くこちらの連載、3月には「好きな人がいます、卒業で離れ離れになるまでに告白すべきでしょうか」というお便りをたくさんいただきました。でも、連載で取り上げませんでした。毎週これを取り上げていると卒業どころかゴールデンウィークまでかかっちゃうし、かと言ってまとめてしまうのも失礼かと思ったので。だから、代わりにと言ってはなんですが、わたしの経験から、こんな話をしたいと思います。
寂しさにおぼれてしまわないように、つながりを取り戻すって話。
具体的には、体育館の縄文人の話です。
10歳の頃、わたしは引越しと転校を経験しました。引越し先に馴染めず、けれどそんなことを言ったら大人に心配をかけてしまうのではと言い出せなかったわたしが進んだ先は、荒れ果てた公立中学校でした。
無視、靴隠し、嘲笑、盗み。なぜか廊下を自転車で走る男子。学校から携帯で大人の男に電話して「物を買わせた」と自慢する女子。「おっぱい揉ませろ!」と叫んで、男子が数人で女子を追い回し、黒板に書かれた女子の日直の名前や女子トイレの近くに女性器を表すマークを落書きする。学校を出れば、女子中学生の彼氏を名乗る今思えば性犯罪者の男に学校近くで待ち伏せられて、「なあ、俺の彼女と同じクラスだろ?連絡つかないんだけど、今日学校来てた~?」と馴れ馴れしく話しかけられる。そんな中学生活でした。
無理すぎる。
学校が嫌で嫌で、本当に嫌で、憎さ余って引越し先の街全体が嫌で、いつも吐きそうになりながら、無駄に坂だらけな上に毛虫と露出狂の出るドブ川臭い通学路を歩いていました。何も楽しくないと思った。どこにも安心できる場所がなかった。そんなある春の日、新入生を交えての全校朝会で体育館に集められ、先生にこう言われたんです。
「みなさんが立っている体育館の床の下には……」
「縄文人の遺跡がありました」
わたしは思いました。
(体育館建てんなよ!!!!!!!!!!!!!!!)
いわく、体育館を建てようと土地を整備したところ、縄文土器の破片が発見された。それでやや工期が遅れたのだけれども、発掘作業を終えてから体育館を建てた……とのことでした。
そう言われてからというもの、なんだか、体育館の中にうっすら縄文人が見える気がしてきたんです。
どんぐり拾いする縄文人。
ラッコのように石で貝を割る縄文人。
輪になって謎の踊りを踊る縄文人。
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