シニアもタイを選ぶ時代
80万バーツ(約266万円)相当の外貨をタイに持ち込み、タイの口座で維持をすること。50歳以上であること……。
それがタイのリタイアメントビザ取得の条件だ。他国より、「ロングステイ推進国」であるマレーシアよりも、実は条件がいいのだ。
およそ300万円の初期資金が必要になってくるわけだが、そのあたりについては、現地の日系コンサルタントがいろいろと相談に乗ってくれるだろう。
この制度を利用して、まだ50代であるのに、早期退職してゆったりとセミリタイア生活を送っている人もいる。子供たちがそれぞれ独立し、老後の拠点をタイに移して悠々自適に生きる夫婦もいる。
ロングステイヤーの多いタイ北部
首都バンコクにもたくさんの日本人シニアがいるが「日本食がなんでもあって便利なんだけど、人の多さと空気の悪さ、騒々しさがちょっと」と、北部チェンマイの近郊に移り住んだのは森本さん夫妻。どちらも60代前半だ。40代の頃、夫がタイ駐在だった。子供は日本の学校を離れたくなかったので寮に入れ、3年ほどふたりでバンコクに住んだ。
「その頃から、老後はタイで、となんとなく話し合っていました」
はじめはチェンマイ中心部のコンドミニアムに住み、メーバーン(家政婦)も雇っていたが、いまはやや郊外の一軒屋に移り住んだ。家賃は6万円ほど。
「日本で暮らしていた家よりも、ずっと広くて快適。ただ水回りはときどき故障が……」
メーバーンは掃除などの手伝いに週に1度だけお願いしている。市内のスーパーマーケットに、ときどき日本の食材を買いに行くのを手伝ってもらったりもする。そのほか2、3か月に1度ほど、バンコクに「買出し」に行くこともある。
「チェンマイは暑いだけでなく、冬場はいくらか涼しくなり、寒さを感じることもあります。そのメリハリが、日本人には必要かな、と。田舎育ちなもので、遠くに山が見えるのもなんとなく落ち着くんです」
いまはとにかく静かな日々を、夫婦水入らずで。
「どちらかの身体にガタがきて、もう無理かな、と感じるまでは、ここにいようと思っています」
食うに困ってタイに来たシニアも
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