河邉徹
受け取ることができなかった、おばあちゃんからの贈り物
【過去の夢⓺】
受験のイライラからおばあちゃんにひどいことを言ってしまった。そのまま、おばあちゃんからの贈り物を受け取れずに東京に出てきてしまったまま月日はたっていった。その事が気になって実家に連絡をしてみたのだが……
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>
イラスト:堀越ジェシーありさ
イライラしてたのは私だ、と今なら思う。だけど、当時の自分はそんな風に冷静に自分を見ることができなかった。アキコの驚いたような表情は今でもはっきり覚えている。
その時以来、あまり厳しいことを言われなくなった気がする。
大学は無事合格した。家から一時間半ほどかかる場所にあった大学は、歴史のある美しい大学だった。麻美の大学生活は、とにかく忙しかった。学業に熱心だったわけではないが、通学時間やバイト、サークルの仲間との集まりなどで、自然と家で過ごす時間は短くなった。
そもそも受験勉強をしていたことも、短大に行ったことも、全て親との約束が理由だった。やりたいことがきっと見つかるから、と言われて進学したが、短大の勉強の中でなりたい自分は見つからなかった。
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この連載について
河邉徹
WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の
〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。
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著者プロフィール
1988年6月28日、兵庫県生まれ。関西学院大学 文学部 文化歴史学科 哲学倫理学専修 卒。ピアノ、ドラム、エレクトリック・ベースの3ピースバンド・WEAVERのドラマーとして2009年10月メジャーデビュー。バンドでは作詞を担当。
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