話題の角田光代訳『源氏物語』に迫る!

平民に優しい『源氏物語』です。│ タレント、エッセイスト・小島慶子さん【第1回】

話題沸騰! 角田光代訳『源氏物語』。角田さんのファンであるタレントの小島慶子さんが、現代の女性の視点で読むと……? 源氏や性愛のことなど、さまざまな話に及んだインタビューを2回にわたってお届けします。

平安が舞台の書下ろし新作みたい


—『源氏物語 上』が出たあとすぐに、小島さんがツイッターで「読みたい!」とつぶやいてくださって嬉しかったです。もともと角田さんのファンでいらしたのですか。

小島 はい。角田さんにご縁あってインタビューさせていただいたこともあるんです。『日本文学全集』の企画を知ったときから『源氏物語』の新訳は誰がやるんだろうなと気になっていたんですが、それが大好きな角田さんだったので、驚きました。
 私が『源氏物語』を初めて読んだのが高校生のときだったので、全然覚えてないんですけど、谷崎源氏と田辺源氏、あと与謝野源氏は読んだのかなあ。もちろん、読破したわけではなく、かじりかじりです。寂聴さん源氏も読んでいるはずなんですけど、人生色々ありすぎて、ものの見事に記憶の彼方に霞んでおり、本当に今回は超久しぶりにまっさらな気持ちで向かいました。すごく読みやすくて、楽しく読ませていただきました。
 高校生のときは学校の授業で習ったところから入ったので、現代人からするとちょっと理解できないところは、「古典だしな」という構えで読んでいました。でも角田さんの文章で読むと、本当に、今書き下ろした、たまたま舞台が平安の話みたいに読めたんです。『源氏物語』の存在を知らない人が「角田さんが平安貴族をテーマに新しい小説を書いたよ」と言われて読んでも、なんの違和感もなく「おもしろい!」と楽しんで読めると思います。
 角田さんの各帖のサブタイトルの付け方もわかりやすくて、初めて読む人でも映像が思い浮かぶと思います。「さがしあてたのは、見るも珍奇な紅い花」とか、なんだろう?とワクワクしますよね。

──角田さんの小説と似ているところなど、あると思いますか。

小島 角田さんの小説には、キャラクターや言動は自分と全然違っても、気持ちはわかるという登場人物が多い気がします。『紙の月』の梨花とか、『八日目の蟬』の希和子とか、かけ離れているんですけど、どこかあの物狂おしさや満たされなさがわかる気がしてしまう。『源氏物語』にもそういう人がいっぱいいますね。
 作者の紫式部の性格の面倒くさいところや、ちょっと鼻持ちならないところが滲み出ているのも面白いですよね。時代の違い以上に階級の差も感じます。うわあ、やっぱりお貴族様だなあという……。なのに、登場する女性たちの屈折ぶりはとっても身につまされる。貴族経験なんてないはずなのに、わかる気がするんです。たとえば、光源氏を拒絶した空蟬に対して「よくやった、空蟬!」と軽くシスターフッドを感じたり、自分も男の目には末摘花のように見えていたのかもしれないと、今さらながら死にたくなったり。きっと、どの女性にも思い当たる節があるんじゃないでしょうか。

—角田さんも感情の部分でわかるとおっしゃっています。

小島 千年前の人と私たちは生活様式も価値観も全然違うので、行動やキャラクターが違っても当たり前と思いがちですけど、千年前の人と自分の違いと、同じ時代に生きていて自分と全く合わない人との違いと、どっちが大きいかはわからないですよね。角田さんの読みやすい文章で源氏の世界に触れて、千年の時を隔ててもなお通底する人間のありようを改めて強く感じました。

—小島さんは『源氏物語』という物語そのものに惹かれていたんでしょうか。高校時代に結構読まれていらっしゃいますよね。

小島 いろいろ読んだはずなんですけど、忘れちゃってるんですよね。宇治十帖なんて全然覚えていなかったり……。

—現代語訳を読んでも、高校生にはわからないところがありますよね。

小島 わからないです。私はいまだにわからないところがあります。恋愛経験も豊富じゃないので。

—肝心なところは書かれていなかったりしますし。

小島 そうですね。今回も「え、ちょっと待って。藤壺といつまぐわったんだ?」ってだいぶ探しました。「どこで読み飛ばしたんだろう?」って何度も読み直しました。「そうだそうだ、肝心なところは書いてないんだ」って、だいぶ経ってから思い出しました。逢瀬があった前提でいきなり藤壺が妊娠しているんですよね。「そこは書いてくれないんだ!」って。書かないから余計にエロいですよね。それと対照的に、若紫とのところはずいぶん生々しく書いてある。このへんは高校生のときと反応が同じですね。高校生のときも「あれ、いつのまに?」「几帳の中に入るところって書いてあったかな?」と戻って必死に探したんですけど、なかったっていう……。


光源氏とMe Too

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話題の角田光代訳『源氏物語』に迫る!

「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」編集部

発売以来、話題騒然!角田光代による新訳『源氏物語 上』。 『八日目の蟬』など数多くのベストセラー作を生み出してきた角田さんが“長編小説断ち”宣言をしてまで、現代語訳を引き受けた理由、実際に訳しはじめてからの苦労や「源氏物語」の魅...もっと読む

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Kawade_shobo 【連載更新】 8ヶ月前 replyretweetfavorite