食べたら太るという古典的矛盾をわれわれはどう乗り越えてきたのか?

夜10時、ラーメンを食べたいけれども、今食べると確実に太るように思われるとき、もしくは職場で飲み会の幹事を任されたけれども、いつもの居心地の良いお店にするか、最近新しくできた評判のお店にするか迷ったとき、あなたらならどうしますか? ……わたしたちは、常に選択することをを迫られています。 その選択において何が問題なのかを見直していくと、そこにもビジネスの芽がありそうです。

世の中には美味しいものがたくさんあって実に素晴らしいのですが、たくさん食べると太ってしまうという困った問題があります。食べたいし太りたくない、という人は、食べて太るか、食べるのを我慢して太らないようにするか、選ばなくてはいけません。

このように毎日生きる中で、私たちはたくさんの意思決定をしています。選択肢Aと選択肢Bのどっちが良いのか? 選ぶのが簡単なこともあれば、一長一短があるので、決めるのが難しいこともあります。

物事を決めるのが難しい理由のひとつは、その選択肢が良いところと悪いところの両面があるからです。食べるという選択肢は、美味しいものを楽しめるという良い面がありますが、太ってしまうという悪い面があります。一方、食べないという選択肢は、太らないという良い面がありますが、美味しいものを楽しめないという悪い面があります。

こういった矛盾した状況を、接近─回避型コンフリクトと言います。このコンフリクトを解消するためのビジネスは世の中にはたくさんあります。例えば、毛皮のコートを着たいけれども、動物愛護の観点から躊躇してしまう人は、何を着るのでしょうか。解決策のひとつは、フェイクファーのコートを着るということです。毛皮を着ることと動物を傷つけることの関係は、食べることと太ることの関係と同じです。後者の問題点を解消することで、ビジネスがなりたっているのです。

このように考えると、こってり味のラーメン屋で黒烏龍茶を置いている理由も分かるでしょう。食べると太ることは分かった上で、人はラーメン屋に行きます。そこで感じる罪悪感を、黒烏龍茶を飲むことで、解消しようとしているのです。いわば黒烏龍茶は免罪符なのです。

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