まとめ買い、まとめ申し込み、セット価格、クーポン。
割安に見えますが、煙幕商法に注意しましょう。
5年ほど前からネットを中心に、飲食店や美容サービス、英会話、マッサージなどに始まり、コンサートや食品、サプリメント、プリペイドカードまで、さまざまなクーポンが発売されるようになりました。
外食の5000円のコースが2500円などとなっていたりして、実は私、何回も飛びつきました。
お金は前払いで払い戻しはきかないし、有効期限があるので相当やりくりして使いました。
ところが、使ってみると得したなあと思うことがほとんどないのです。
あるとき、5000円の中華のコースが2500円というクーポンがありました。
ちょうど大勢で食事会をしようと思っていたので、こりゃいいやと思って買ってみました。
名前も知らない店でしたが、まあ中華なら大丈夫だと思ったのです。
行ってみると、正直言って駅から遠いエレベータもない薄暗いビルの3階で、店の居心地もよくなく、こりゃ客は来ないよなと思いました。
まあ、それでも安くておいしいものが食べられればいいやと期待はしたのです。
ところが、出てくる料理は購入時の写真のイメージからはほど遠いものばかり。
食事は半額になっているというけれども、もともとの設定値段が高いのです。いつも出かける顔なじみの中華料理店でせいぜい3000円くらいの料理でした。
さらにビールや飲み物がびっくりするような値段だった。
ひとりで食べに行ってるのであれば、そんな店では、無料の水道水だけで済ませるところですが、さすがに友人などと出かけて中華で水だけというわけにはいきません。お茶もなかなかの高価格。
ということで、せいぜい3000円くらいの価値しかない、5000円のコースを2500円で前払いし、割高なビールを飲む羽目になりました。そこの店で飲み食いしていることを忘れたくて何杯もおかわりしました。
流行らない店は、やってきた数少ないお客で大もうけしなければ、店の経営は成り立たちません。クーポンは撒き餌。飛んで火にいる夏の虫。
私は、夜の白熱灯に群がる虫のように安さに引き寄せられて、友人たちを道連れに痛い目にあったわけです。もちろん飲み物代は私が持ちました。
このクーポンのシステム、数年前の年末に、スカスカのおせち料理の事件でお茶の間の話題にもなったので覚えておられる方もいるでしょう。
リベンジと、その後もいろいろと試しました。
高級ハンバーガーチェーンの2割引のクーポンセットを買って店に行くと、ハンバーガーの半額セールをやっていたりして、得したというよりも、先払いで損しただけ。
1時間3000円のマッサージ券を4枚も買って出かけてみたら、実際は50分で、どうせクーポンできた客だからと完全に手を抜かれました。もったいないので残り3回も何とか行きましたが、いつもお願いしているストレッチの先生にあと2000円多く払ってお願いするほうが断然得だなあと思ったものです。
S席1万3000円が8000円で出かけた来日ミュージカルは、もちろんS席でもA席に近いよくない場所のS席。
唯一よかったなあと思ったのは有名ジャズクラブのミュージックチャージ半額というものでした。
これも、思ったよりも予約が入らないための販売だったのでしょうが、割安でなければ行かなかったミュージシャンで、つまり、楽しんだのですが、行かなくてもいいものでした。
それからはほとんど手を出していません。
しかし、どんなに削除要請しても相変わらず送られてくるメールには、今週の注目クーポン情報が載っています。
時おりまた興味を持って調べてみますが、こりゃダメだとなるものばかり。
10回買って、得したなあと思うことが1回くらいしかないからです。
あるとき、このクーポンでお客集めをしている店のオーナーと話をする機会がありました。
このシステム、クーポンの発行会社に半額の手数料を支払うというのです。
となると、先に書いた中華なら、5000円のコースの半値のクーポンが2500円で、店に残るのは1250円。これでは、食材原価ギリギリあるかないか。そりゃやる気もなくなるなと思いました。
最近はこのクーポンには、クーポンのお客様だけの限定メニュー、限定料理などと銘打って販売することもあります。
有名料理店も時たま登場します。1万5000円のコースが8000円。
しかし、お店のメニューに載っていない料理やコースなのです。すると、元の1万5000円という価格の根拠はほとんどありません。
割引の価値があるのかどうかなど、どうやってわかるのでしょうか?
私はこのようなよくわからない割引商法を、煙幕ビジネスと言っています。
よく見えない、わからないからです。
スマホにインターネット、ケーブルテレビに固定電話まで全部まとめて契約すると大幅割引。
これらは、長期間の契約と、途中解約のペナルティがつくのが通常です。
これらも、どこがどう安くなっているのかもわかりませんし、スマホのかけ放題があれば、もうIP系の固定電話は必要でしょうか? となると、まとめて割引は本当に得かどうかわかりません。
入ってみたけれど思ったほどケーブルテレビを見る時間もないし、スマホは格安プランがどんどん出てきて乗り換えたい。
そう思っても、まとめて契約は、それらをしにくく縛ってしまう。担当者にいろいろ尋ねても、毎月の割引額ばかりを強調します。
不要なサービスをつけてもらっても、割り引いてもらったということにはならないのです。
テレビの通販番組で、今日は掃除機が大安売り、1万8900円のところ、今日はもう1台おつけします。包丁セット、2セットで1万円。さらに、ペティナイフのおまけつき!
みなさんと同じことを私も思っています。
それ、2台や2セットいらない。おまけもいらないから割り引いて。
そう思ってテレビモニターにツッコんでいます。
こういう、まとめて「安い」「お得」という煙幕を張られて、いらないものをつけての割引は消費者にやさしい割引ではありません。
本当に必要なもの以外は無用の長物です。
いらないものを割り引いてもらってもしかたありません。
必要なものだからといっても、「まとめて」前払いというのも考えものです。
若いころ、無謀にも自分にもモテ期がくるかもしれない、いや、もう来ていいだろうと、少しでもイケメンを目指して努力しようとスポーツジムの会員になったことがあります。
キレイな受付の女性に1年分の前払い契約をすすめられました。1か月分安くなるというのです。
そうか1か月分、約1万円も安くなるならと笑顔でカードで決済しました。
最初の3週間ほどはモチベーションも高く通ったのですが、仕事が忙しくなり、夜の飲み会も増え、自分を鏡で見るとやっぱりモテ期は来ないと自覚して、ほとんど幽霊会員になってしまいました。
先のことはわからないのに、得しようと思って損してしまった典型です。
今では、このようなまとめ払いに救済措置も取られるようになりましたが、救済措置がなかったものもあります。
それは、有名コーヒーチェーン店、Dの下北沢店、Pの溜池店のコーヒー回数券です。
痛い経験を2回もしたのです。
どちらも8~9杯分の値段で11杯分のコーヒー券を販売していました。それも、期限なし。
前者は小劇場の芝居を観に行くときに、後者はサントリーホールにクラシックの演奏会に行くときに使うだろうと思って購入。
期限もないし、1~2年くらいで使えばいいやと思っていたら大きな間違い。どちらも買って3か月もしないうちに閉店してしまい、紙くずになってしまいました。
なんと、9杯分の値段で1~2杯のコーヒーを飲むことになってしまったのです。
本社に泣きついてみたのですが取り合ってくれませんでした。
半額シールの弁当を買って
「節約している」と思うのは、ただの初心者です。
デパ地下でもスーパーでも閉店間際などに、総菜や弁当の割引セールがあります。
割引を始める時間の目安は、常連さんにはおおよそわかっていて、カートに空のカゴを載せて総菜や弁当売り場をウロウロする人がでてきます。
けれど、すぐには何も買いません。
20%引きのシールが貼られたあとでも、20分もカゴの中にキープしているだけの人もいます。
店員さんがやってきて弁当に半額の割引シールを貼り始めると、おもむろに「これも割り引いてよ」と、キープしていた弁当に半額シールを貼ることを当然のように要求します。
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