井ノ原快彦の受け流し方

8年間に渡り司会をつとめた『あさイチ』から卒業する井ノ原快彦。有働由美子アナウンサーの卒業を受け、「誰か一人が辞めるんだったら、みんなで辞めたほうがいい」と思いを明かしていました。いまだ惜しむ声の多い『あさイチ』での井ノ原・有働コンビのやりとりから、井ノ原快彦の立ち振舞いについて、武田砂鉄さんが考察します。


足を悪くした田村さん

『あさイチ』が面白いのは、常に、何かと仕掛けようと試みる有働由美子アナの働きかけをあらかじめ予想する井ノ原快彦が、未然に仕掛けを防止したり、むしろ乗っかったりする様子に、法則性を見出せないままだからではないか。こうきたらこう、という定則がなく、偶発性が保たれている。テレビの中で偶発性を保つ時には、偶然こうなったんですよ、という主張が伴いがちで、それってちょっと矛盾しているように思えるのだが、『あさイチ』にはその主張がない。

私たちの会話というのは常に偶発的なもので、たとえば今、喫茶店で隣りにいる老夫婦の会話をそのまま文字起こししてみると、
夫「そういえば、木更津に引っ越した里崎さんが今度上京してくるって」
妻「木更津は、上京って言わないでしょう。田村さんが足悪くしたって」
夫「確かに木更津じゃ上京じゃないね」
妻「木更津の人に失礼だよ」
となる。この時、耳をそばだてていた私は、足を悪くした田村さんのことを気にかけるのだが、夫婦は、二度と田村さんの話をしなかった。

撒いた餌は全て回収すべきか

ドラマの脚本ならば、「田村さんが足悪くした」という発言がそのまま放置されることはあまりないが(それを放置するドラマはおそらく面白い気がするけれど)、ニュースやワイドショーもこれと一緒で、余計な一言がなるべく放置されないようにする。余計な一言が生まれないようにする。だからこそ、男女問わず、番組には司会者のような明確な上長が用意され、サブのアシスタントにふったり、コメンテーターに順番にふったりすることで、余計な一言が生まれないように心掛ける。すべての発言に意味を約束させるために力関係を確保し、円滑な進行を心掛ける。

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

chiharu1016 #SmartNews この見出し、イノをうまく受け流す方向かと思ったら逆だったwww https://t.co/fr8jCuy2RS 1年以上前 replyretweetfavorite

0501Can @cakes_PRさんから #あさイチ #井ノ原快彦 #有働由美子 @takedasatetsu #ワダアキ考 #テレビの中のわだかまり 1年以上前 replyretweetfavorite

marico_o あさイチがもうすぐ変わるのがさみしい 1年以上前 replyretweetfavorite