ジョン、ありがとう」

「私」はどこからきたのか?1969年7月20日。人類がはじめて月面を歩いてから50年。宇宙の謎はどこまで解き明かされたのでしょうか。本書は、NASAの中核研究機関・JPLジェット推進研究所で火星探査ロボット開発をリードしている著者による、宇宙探査の最前線。「悪魔」に魂を売った天才技術者。アポロ計画を陰から支えた無名の女性プログラマー。太陽系探査の驚くべき発見。そして、永遠の問い「我々はどこからきたのか」への答え──。宇宙開発最前線で活躍する著者だからこそ書けたイメジネーションあふれる渾身の書き下ろし!人気コミック『宇宙兄弟』の公式HPで連載をもち、監修協力を務め、NASAジェット推進研究所で技術開発に従事する研究者 小野雅裕がひも解く、宇宙への旅。 小野雅裕の書籍『宇宙に命はあるのか ─ 人類が旅した一千億分の八 ─』を特別公開します。


忘れてはならないことがある。アポロの歴史的偉業の裏には、月を歩いた十二人の宇宙飛行士やケネディー大統領だけではなく、無名の四十万人のヒーローがいたことを。四十万人に四十万の戦いがあった。その一つ一つが常識との戦いであり、不可能への挑戦だった。

そしてそれは現代でも同じだ。あらゆるイノベーションや大プロジェクトの裏には、有名なCEOや裕福な投資家や演説の上手な政治家だけではなく、数多くの無名の技術者、科学者、秘書や事務員や運転手や清掃員や作業員がいるのだ。スティーブ・ジョブズがメディアカンファレンスで行った華々しいプレゼンテーションではなく、日々技術者が向かう散らかった机こそが、未来が生まれる現場なのである。

マーガレット・ハミルトンはアポロ11号の月着陸の瞬間をMITの会議室で見届けていた。アポロ誘導コンピューターを開発した大勢のMITの技術者や、彼らを支えた秘書や事務員も一緒だっただろう。コア・ロープ・メモリを一針一針縫った女工さんたちはどこで見ていたのだろうか。「人類を月に送るのを手伝っているのです」と大統領に胸を張って答えた清掃員はどこで見ていたのだろうか。

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宇宙に命はあるのか ─ 人類が旅した一千億分の八 ─

小野雅裕

銀河系には約1000億個もの惑星が存在すると言われています。そのうち人類が歩いた惑星は地球のただひとつ。無人探査機が近くを通り過ぎただけのものを含めても、8個しかありません。人類の宇宙への旅は、まだ始まったばかりなのです…。 NASA...もっと読む

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コメント

tipi012011 フォン・ブラウンカッコイイ! 2年以上前 replyretweetfavorite

ikb フォン・ブラウンの名前から、どうしてもプラネテス((C) @makotoyukimura )のロックスミスさんを連想する。 2年以上前 replyretweetfavorite

syouwaoyaji 「人類を月に送るのを手伝っているのです」と大統領に胸を張って答えた清掃員はどこで見ていたのだろうか? https://t.co/exG8otCE4L 2年以上前 replyretweetfavorite