「池崎としおりが一緒にいる!?」
なんで? という疑問の次に心に浮かんだのは、焦りと怒り……。
大切な人を失ってしまうかもしれない予感と、信頼していた人に自分の存在をないがしろにされた理不尽感。お腹の底の底が膨らんで破れるかもしれないほどの悲しみ。
誤解や勘違いであることを願うけど、自分の目で見たものだけはごまかせない。
あそこにいたのは確かに「池崎」と「しおり」。
先に見つけたのは一緒にいた母で、「あれ、池崎くんじゃない?」という母の言葉をユウカは全力で否定をしてその場を去ったが、ユウカの目でも池崎の姿をはっきり捉えていた。
見て見ぬ振りとか、大人の対応とか、そういうのが一番苦手だったからユウカは決めていた。池崎に今日何をしてたか聞いてみよう。それでも、ユウカも少しは成長している。
最初から喧嘩腰ではなく、" それとなく ” 今日のことを聞いてみることにした。
池崎は23時を回った頃、帰宅した。
「あれ? まだ起きてたの? 遅くなるから寝ててよかったのに」
残業から帰宅したときみたいなセリフを悪びれる様子もなく口にした池崎に、ユウカは一気に爆発しそうな気持ちをなんとか抑え、深呼吸してから言った。
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