ビジネスの世界では、○○理論と呼ばれるものがたくさんあります。一番有名なのは、おそらくマズローの欲求階層理論だと思います。どんな理論なのか、かんたんに復習しましょう。
欲求は5つのレベルに分かれます。もっとも基礎的な欲求は生理的な欲求です。水とか睡眠など、生きるために不可欠なものに対する欲求です。次は、安全に対する欲求です。命が危険にさらされないことへの欲求です。第3の欲求は、所属に対する欲求です。友情とか仲間意識というもの対する欲求です。第4の欲求は、自我に対する欲求です。何かを達成したいとか、このような地位に就きたいといった欲求です。第5の欲求が、よく知られた自己実現に対する欲求です。
この理論によれば、人間は低次の欲求を満たすとより高次の欲求を満たしたくなるそうです。逆に言えば、低次の欲求が満たされていなければ、より高次の欲求は満たしたいと思わないということです。実感としても確かにそうだと思います。「衣食足りて礼節を知る」というように、衣食への欲求が満たされていと、礼節などどうでも良くなります。こうした実感にもフィットした議論がゆえに、マズローの欲求階層理論は、よく知られているようです。
しかし、この理論は研究者からは長らく批判され続けてきました。それだけでなく、マズローの議論そのものへの誤解というものもあります。このあたりを、今回、整理しましょう。それぞれ2つずつあります。