夢の中だけ存在する不思議な青い扉

【未来の夢⑩】
「明晰夢」を見続けていると、夢の中に扉が出てきて、その先に行くと別の世界が広がっているという。
「その扉を見つけられればあの夢の理由がわかるかも」 そう考えた僕は、その扉に辿り着こうと意識を集中して眠りについた
<WEAVERの河邊徹がドラムスティックからペンに持ち替えて描いた作家デビュー作!>


イラスト:堀越ジェシーありさ

  自分の意識を見つけた時にはもうここにいた。夢の始まりは虹の始まりのように摑めないものである。
 眠りが繋いだ場所。塀のあるアスファルトの道、街灯の光。
 回を重ねるごとに夢だと気づくのが早くなっているようだ。

 今回はもう落ち着いていた。
 それは、夢のことを自分で調べてきたからということもあるが、何よりここに望んで来たからだった。
 これは夢の中だから、何が起きても大丈夫。
 健人は自分で自分に言い聞かせた。

 長く続くアスファルトの道の先に、誰かがいる気配を感じたが、健人は敢えてそれを見ないようにした。もし葵の姿を見てしまうと、夢だとわかっていても狼狽えてしまうだろうと思ったからだ。

 葵が言っていたことやネットの書き込みがもし本当なら、きっと夢の中のどこかに不思議な扉があるのだろう。そこまでに本気で信じているわけではないが、今はただそれを探してみるしかなかった。

 夢の中特有の鈍い感覚が健人の全身を包み込んでいる。
 最初の場所から後ろを振り返ると、現実にあったかはわからない、派手な赤い車が路地に駐車してあった。
 目を惹く程の真っ赤な車を見ていると、その後ろに、青い色の何かがあることに気がついた。
 よく見ると、それはコンクリートの塀とは明らかに相性の悪い、不思議な木でできた青い色の扉だった。
 その扉は、一度目に入ると赤い車と同様、景色の中で違和感を放っている。元々なかった所に無理やり作ったようにも見える。健人はゆっくり歩いてそれに近づいてみた。
 車の向こう側へ行き、扉の前に立つ。

 ちょうど健人の身長くらいしかない扉は、人が行き来するものとして小さくて不自然だ。
 ペンキ塗りたて、という注意書きが貼られてあっても不思議ではないほどに鮮やかな青色をしている。
 目の高さの少し下には、赤い色の風船が模られたプレートが掲げられていて、中には金色の文字で何かが刻まれてある。

「ラム……レス?」

 健人は怪訝そうに眉をひそめながらも、独特な存在感のある扉に手を伸ばしていた。
 扉をゆっくりと押して開くと、中は暗闇が支配していた。

 扉の向こうは長い通路が続いていた。灯り一つない道だが、中に入ってみると、狭い通路がずっと続いていることがわかるくらいに、うっすらと明るい。
 まるで壁や床自体が光源になっているようである。

 低い天井にも注意を向けながらしばらく歩いていくと、また入り口と同じような青い扉があった。
 ここまで来て躊躇うことは何もない。心の中で膨らみつつある恐れの気持ちを抑えて、ドアノブに手をかける。
 そしてそっと扉を開くと、中は狭い通路からは想像できないほどの大きな部屋が広がっていた。

 天井は部屋の二階分を吹き抜けにしたほどの高さがあり、壁や床は薄いピンク色で統一されている。
 左側の壁には横幅が一メートル程ある長方形の油絵が掲げられていて、右側と正面にはまた別の扉があった。
 中央には横向きにベッドが置いてあり、それを挟んで二つ、丸い木の椅子が置かれてある。

 窓が一つもなく地下室みたいだが、天井が高いので圧迫感はない。壁や床の淡い色のせいで、どことなくファンシーな印象もあるが、ベッドが置いてあるので病室のようにも見える。部屋に広さがあるため、総じて殺風景に感じる空間だった。

「こんばんは」

 声が聞こえた方を見ると、ベッドの向こう側に女性が立っていた。人がいたことに驚いた健人だったが、そもそもここは夢の中なので何でもありのはずだ。<つづく>

【次回は…】
気がつくと、扉の赤い風船の看板に書かれた「ラムレス」という文字。その扉を開くと、夢の管理人だと言う女性が立っていた。夢工場というその場所では、夢を修正することができるという。管理人が話す「明晰夢」が持つ力とは

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夢工場ラムレス

河邉徹

WEAVERのドラマー・河邊徹の作家デビュー作。バンドで作詞を担当してきた河邊の 〝言葉の世界〟をドラムスティックからペンに持ち替え、描いた「夢」をテーマにした長編作。 ...もっと読む

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kwb_wvr ついに、不思議な夢の世界へと足を踏み入れます。 そこで待っていたのは…!   https://t.co/wALuzdyXBL #夢工場ラムレス #WEAVER #小説 #睡眠 2年以上前 replyretweetfavorite