又吉さん、エッセイと帯コピーはどうやって書いているんですか?

芸人で初めてTCC新人賞を受賞した五明拓弥さんが名だたるコピーライター・CMプランナーにに“人の心を動かす言葉のつくり方”を聞いてまわった書籍『全米は、泣かない。~伝え方のプロたちに聞いた刺さる言葉のつくり方~』の発売を記念して、巻末に収録されている又吉直樹さんとの対談「又吉直樹はどのように小説を書いて、どのようにネタを作っているのか?」を公開します!最終回の今回は又吉さんがエッセイや本の帯コメントを書く時に意識していることを伺いました!

読者の持っている概念が変化することを考える


五明 俺のクセなんですが、お笑い以外の仕事でも、すぐ「おもしろ」に走っちゃうみたいなことがあるんです。簡単にいうと、すぐボケてしまう。本当はボケなくてもよさそうなところでも、ボケなきゃ怖いみたいなのがあって。又吉さんはお笑い以外の仕事でそういうふうにはならないですか?

又吉 そうやなぁ。正しいか分からへんけど、お客さんの満足度とか、作品を鑑賞する人を楽しませたい、喜ばせたいっていう意識が強いから、それがいちばん実現できる方法を考えるかな。要は、芸人やから大喜利で埋め尽くすこともできるわけやんか。たとえば、「お茶」っていうテーマで何かエッセイを書いてくれって言われたら、それこそ、大喜利のお題みたいに「この世には腹立つお茶と感謝できるお茶がある」みたいなことを書いて、そこから「腹立つお茶大喜利」をやっていけるし、「感謝できるお茶」の方も感謝できるお茶のシチュエーションを書いていけば、笑いの構造はすぐにつくれてしまうねんけど、俺が一番やりたいのは「お茶」というテーマやとしたら、読み終わった時にそれを読んだヤツの「お茶」観がちょっと変わっているということやねん。

五明 自分のなかの「お茶」観?

又吉 読んだ人が「そういえば、お茶って、そういう面もあるんやな」と思うような。お茶が今までよりも鮮明に見える、みたいな感じ。あとは、飲む時に「ああ、お茶を飲めるって○○だなぁ」という、お茶に対する概念が一つ増えるような。だから、やりたいのは変化やな。エッセイを読み終わった時、あるいはコント見終わった時に、読み手側、鑑賞する側がいかに変化するかを大切にしてる。

五明 確かに、ピースさんが準優勝した2010年のコント『男爵と化け物』って見終わった後、「化け物観」が変わるかも。「こんな化け物もいるかもなぁ」って。深みがあるってことなんですかね? 大喜利だけで埋め尽くすとそれは楽しいかもしれないですけど、「ウン、楽しかった」で終わるというか。

又吉 そうやし、言葉の話でいうと、大喜利は一つ一つが基本的には独立していて、数が多いことが正解やん。で、毎回百点を狙う。でも文章になると百点のネタが30個ぐらい並べられてたら、お腹いっぱいになるやん。寿司屋でも中トロは流れのなかで一回か二回でいいというか。

五明 確かに。30貫は食えないですね。

又吉 そんなにはいらんから、だから構成というものが必要になってくるかな。大喜利って、瞬間的なものやし。五明の大喜利能力は武器やねんけど、それで埋め尽くしても百点×30個の結果にはつながっていかへん。実は、長々と前振りして最後の一発だけ百点の回答を置くことによって百点以上の結果が出るかもしれへんし。それが構成やから、そこはすごい気を付けてるところかな。

五明 その言葉がどう活きるかを考えることが大切なんですね。



「多くの人にこの本を手に取ってもらえる言葉を考えよ」

というお題にどう応えるか


五明 本の帯のコピーは一時期、結構、書かれていましたよね。

又吉 僕にくる「本のコピー書いてください」という仕事は、五明がやっている広告のコピーと全然違うのよ。何でかっていうと、僕に本の帯を書く話をいっぱいいただけるのは、僕が一応テレビに出ていて、本好きとして知られていて、「たくさん本を読んでる人」っていう印象があるから。そういう人間がコピーを書いて薦めれば、「この本おもろいかもな」って思わせられるということが前提にあるんで依頼がくる。ゼロからその本の魅力を伝えなさいっていうお題じゃなくて、僕の場合は「又吉が」書いたというのが重要。だから、そこで言葉を複雑にするとか、何回も味がするみたいな、複雑な構造にする必要は全然なくて、何やったら「めちゃくちゃ面白かった」っていう一言の方が本の帯コピーとしての威力が増すかもしれへん。

五明 そうした方が、「多くの人に伝える」という広告的な意味があるってことですね。

又吉 そうそう。「傑作!」とか、「感動した!」とか、そういうワードは普通に考えたら僕は使わないですよ。基本的に作品は全部面白いし、素晴らしいから、そこにわざわざ「素晴らしい」と書くことは、僕からしたら、何も言ってないに等しい。でも、受け手側はそうじゃないから。「素晴らしいって書いてあるから、この本素晴らしいんかな」と単純に思うから。本の帯に関しては、僕は表現者じゃなくて紹介者として存在しているから、そういう自分の表現は一回殺して、その本がいちばん素晴らしいと思うことをストレートに書くようにしている。もちろん、その本が好きじゃないとやらないですよ。その本が好きだったら読んでくれたら分かると思うから、手にとってもらうためだけの仲介者として、どうするかということしか考えない。そこは言葉を磨くというのとは違いますね。本と人をどうつなげるかということだけ。

五明 「多くの人に手にこの本を取ってもらう言葉を考えなさい」っていうお題が出てるってことですね。



エッセイで本を紹介する時に気をつけていること

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全米は、泣かない。

五明拓弥
あさ出版
2018-03-17

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五明拓弥

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コメント

asapublishing 【パブ情報】cakes連載   2年以上前 replyretweetfavorite

skg_pw これは必読。 2年以上前 replyretweetfavorite

lebeaujapon 最後までめちゃくちゃ面白い対談だった 2年以上前 replyretweetfavorite

gomeill cakes、又吉さんとの対談第4弾です。 #全米は泣かない https://t.co/6RSg0FmOiN 2年以上前 replyretweetfavorite