又吉直樹はどのように小説を書いて、どのようにネタを作っているのか?

芸人で初めてTCC新人賞を受賞した五明拓弥さんが名だたるコピーライター・CMプランナーにに“人の心を動かす言葉のつくり方”を聞いてまわった書籍『全米は、泣かない。~伝え方のプロたちに聞いた刺さる言葉のつくり方~』の発売を記念して、巻末に収録されている又吉直樹さんとの対談「又吉直樹はどのように小説を書いて、どのようにネタを作っているのか?」を公開します!まずは、又吉さんが世に出る前に開かれていた「又吉大喜利塾」のお話から。大喜利で学んだことが今さまざまなことに役立っているんですって!

深夜のジョナサンで開かれた「又吉大喜利塾」


五明 最初の出会いは東京のNSCでしたよね。東京の吉本の養成所で5期生と6期生だった。でも、在学中から何年かは、しゃべることもなかったですよね。代々木でバッタリ会ってからですよね? 俺は当時、代々木に住んでいて、たまたま又吉さんは代々木を散歩中で、トンネルの中でバッタリ。

又吉 たしか、俺がルミネ終わりやった時やんな。「どこ行くんですか?」って、言うて。

五明 そうです、そうです。ドコモタワーの方から歩いてきた又吉さんに声かけて。

又吉 「今、ルミネ終わって、渋谷まで歩くねん」って言って。五明がビックリしとった。「嘘でしょ!」って言って。お金が全然なくて、よう歩いてた時やな。

五明 そこからですよね? 色々、誘ってくれるようになったのは。

又吉 そやな。

五明 あの頃から始まったんですよね。大喜利塾が。

又吉 そうか、あの頃か。

五明 そうです、又吉さんは大喜利の先生ですよ。

又吉 当時、若手の大喜利大会があるといったら、だいたい俺が優勝しててんな。皆が「大喜利、苦手や」みたいなことを言うてて、「いや、俺もそんなに得意じゃないねんけど、一人でずっとやってたら何となくコツがつかめた」って言ったら、「え? それ努力でいけるもんなんですか?」みたいな。「俺もそういうのは才能なんかなと思ってたけど、努力で見えてきたことが色々あるなぁ」って言ったら「教えてくださいよ」って、最初は五明と何人かやったけど、段々「僕もいいですか?」って、増えていった。

五明 そうですね。吉祥寺のジョナサンで夜中から朝までやってましたね。

又吉 大喜利のお題を一個、自由帳みたいなやつに書いて、その下に答えを白いところがなくなるまで書き続けるみたいなことやってたな。「こういうパターンもあるよな」みたいなのを皆で言い合って。


大喜利の力はいろいろな場面で使える


五明 楽しくやってましたね。俺、いまだに覚えてる名言があるんですけど。

又吉 俺、覚えてない。

五明 ホントですか? 「このお題、難しいですね」って言ったら、又吉さんが遠くを見ながら、「五明、大喜利の答えはお題の中にあるんや」って。本当、その通りですよね。

又吉 今となってはな。そのお題じゃないと出てこうへん答えがあるはずやから。どのお題にも当てはまる答えっていうのはウケるかもしれへんけど、実はなんかちょっとずれてるというかね。難しいお題が出た時もそうやし、大喜利に関わらずやな。

五明 そうですね。大喜利にかかわらず、一発ギャグでも。文章書く時もですか?

又吉 エッセイでも小説でもどんな時でもそうやと思う。文章書く時ってまずテーマがあるやん。そのテーマをどう解体していくかを考える。色々解体したり、そこに付け加えたりしていくうちに、段々答えが見えてくるというか。

五明 なるほど。本当にあの大喜利塾では色々、教えてもらいました。

又吉 大喜利がお笑いの全てではないし、芸人が絶対に持っとかなあかん能力ですらないのかもしれへん。でも、大喜利ができる力があると色んなところで使えたりはするよなぁ。もちろん、ネタの中でも役立つし、それこそ、五明が今やっているCM作ったりするような仕事には、すごく役に立ってるんじゃないのかな?

五明 ええ、すごく。一発ギャグでも何でも、役に立ってます。分かんない時はまずお題をつくれって言われて。お題の中に答えはあるから、そこから探れってことですよね。

又吉 たとえば、一発ギャグで「どうやって作ろう? 面白いの、できひん」って思ったとする。まずはめちゃくちゃシンプルに、「その会場にいるお客さんが全て笑う一発ギャグをやりさい」というお題の大喜利が出たつもりで考えていく。広すぎるお題とか、難しいお題にぶつかって「絞りようないやん」って思ったら、自分でお題に設定を付け加える。今の例だと「ロマンチックな」を勝手に付け加えて、「その会場にいるお客さんが全て笑う、ロマンチックな一発ギャグをやりなさい」と。お題が広すぎたら絞る、逆に、お題が狭かったら広げる、っていうのを自分でプラスしていく。プラスした「ロマンチックな」をお客さんが知らなくても、ロマンチックな一発ギャグを表現して見せた時にちゃんと伝わるから。お客さんは「ロマンチックなヤツはあかんやろう」とは思ってないし、「全員が激怒する一発ギャグ」でもいい。そうやって自分で一個お題に何かを付け加えて探っていくと、答えが見つかってくるから。どんなものでもお題をつくって、プラスで広げたり、絞ったりしていくということやな。

五明 これ、実は、知らない人が多かったりするんじゃないですか? お題をつくって逆算で考えるっていう。

又吉 そうやなぁ。

五明 僕はだいぶ、助けられました。


自分が産んだ言葉は心中する覚悟で大事にする


又吉 五明の言葉に対するスタンスは、最初から気になっててん。

五明 そうなんですか。今まで、そんな話したことなかったですけど。

又吉 なんやろうな。コントしてる時の会話が聞き取りやすかったというか。大事やねん五明は、ネタでも大喜利でもギャグでも、「これ届いてくれ!」っていう出し方するやん。

五明 そうですね。

又吉 でも、人によってはウケへん可能性もあるから保険をかけてしまうことがあんねん。自分の言葉と心中できる覚悟が決まってないというか。覚悟が決まってないと、スベるのが怖くて、「そこまでかわいい子どもじゃないんで」っていう出し方をする。そういう人は言葉に命をかけられてないから、それを何年も積み重ねていくと、たぶん言葉の方からも嫌われていくねん。大喜利塾でも「出してウケへんと思っても投げやりに自分が書いたネタを下げんな」って……。

五明 言ってた! 言ってた!

又吉 「ちゃんと見せや」って。自分が考えたネタって、自分の子どもみたいなもんやから、親だけはかわいがらんと。

五明 そうだ。本当にそうですね。

又吉 後で、「いや、もうホントにバカな子なんで」って回収して、バカとして活かす方法もあんねんけど、最初にちゃんと出さな、それすらできひんから。

五明 そうですね。大事ですね。本当に、大喜利塾では大事なことを学びました。ひさしぶりにやりましょうね。ジョナサンで。

広告業界のトップを走る人たちは何を考えているのか!?

全米は、泣かない。

五明拓弥
あさ出版
2018-03-17

この連載について

全米は、泣かない。~伝え方のプロたちに聞いた刺さる言葉のつくり方~

五明拓弥

芸人で初めてTCC新人賞を受賞した五明拓弥さん。これから芸人としてだけでなく、CMプランナーとしても活動していきたいと思いました。しかし、今まで芸人一筋だった五明さんはコピーの書き方も、CMのつくり方も一度も教わったことがありません。...もっと読む

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asapublishing 【パブ情報】 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

junkiuchi #よしもと #NSC #グランジ #五明拓弥 #又吉直樹 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

shokoku_junrei 『言葉に命をかけ… https://t.co/XJwTMZyVah 約1ヶ月前 replyretweetfavorite