西洋と日本の双方で、アートの全体像を駆け足で巡ってきました。
言及したのは時代を画す巨匠とその作品ばかりなので、なんとなく見覚え・聞き覚えがあることも多かったのでは?
それら画家・作品それぞれのつながりが見えてくると、「なるほどわかった!」と思えます。流れを読む。文脈を知る。それがアートをいっそう楽しむポイントです。連載でもその点に注力してまいりました。
ですから、これまでの回を読んでいただいていれば、それだけでもう、
「アート? 西洋美術も日本美術も、だいたい知ってるけど」
と言い切って、まったくかまわないと思いますよ。
今回はもうひとつだけ、アートを知るために必須のことを挙げておきたく思います。それは、
実物に触れること。
世界でただひとつのオリジナルである。それが、あらゆるアートの価値の源泉です。アートの世界がすばらしいのは、そうしたオリジナルに接触する機会が、積極的に設けられている点です。それは主に展覧会というかたちで実現されますね。
アートを知る仕上げに、ぜひ展示へと足を運びましょう。
ハズレのない展覧会の選び方
とはいえ、展覧会と名のつくものは無数に開催されています。テレビCMまで打って大々的に宣伝され、入場するのに行列しなければならない大型展もあれば、小さいギャラリーでひっそりと開かれ、足を踏み入れるのにたいそう勇気のいる展示だってあります。はて、どれを選べばいいのか。
ハズレのない選び方をひとつご提案しましょう。「常設展」に行けばいいのです。
多くの美術館には、収蔵品を見せるための常設展示室があります。よく話題となる企画展を開くのとは別の場所が、ちゃんと用意されているのです。
美術館の本来の役割は、美術品の収集、保存、研究、展示です。良心的な美術館であれば、アイデンティティを賭してコレクションを形成し、それらをいい状態で観てもらうことに腐心しています。その成果たる常設展に注目せずして、他にどんな観るべきものがあるでしょう。
それに、考えてみてください。パリならルーブル。ロンドンでは大英博物館。ニューヨークは近代美術館(MOMA)。海外旅行ではみなさん、世界的な美術館を観光ルートへ組み込みますね。そのとき観ているのは、各館の常設展示です。国内の常設展示にだけ目もくれないのは、なんとももったいない話です。
では、日本ならどこへ行くか?