褒められると褒めることができる
(3か月後。MBメソッドを実践してきたAさんがMBバーを訪れる)
MB そのファッションを見ると、ドレスとカジュアルのバランスをきちんと考えてくださいましたね! 背筋も伸びて自信に満ち溢れて見えますよ。
A 実は教わったあとに、同僚に買い物に付き合ってもらったんです。同僚の前原とは一緒にGUで買い物して、飲みにいって以来、すっかり服仲間に。
MB 自分で買い物に行くというのは大事です。テレビでよくやっている亭主改造計画のようにスタイリストに服を選んでもらったり、奥さんや彼女が買ってきたものでおしゃれになっても意味がないんですよ。
A 結果が同じでもダメなんですか?
MB 過程が重要なのです。実際に服を着てみてどうでしたか?
A 着ていく服があるってことで、気軽に出かけられるようになりました。
MB 出かけるっていうのは、遊びにいくってことですか?
A 時間つぶしにカフェに行くとか、前は面倒くさいというかハードルが高いというか……無意識のうちに避けていたのに、平気になった気がします。会社の飲み会で、後輩の友村って女の子に「雰囲気が変わった」って……。
MB 悪い気はしなかったでしょ?
A ずっと気になっている子だったので、正直、めちゃくちゃ嬉しかったです。
MB そうやって外見を変えることで、ほんの小さな自信ができて、人に褒められることでさらに自信がついて、新しく挑戦できることが少しずつ増えていくっていうのがファッションのチートスキルの効果ですから。
A (次の挑戦は友村さんをデートに誘うことだな)……さっきの、奥さんが代わりに服を買っても意味がないというのは?
MB あなた自身で考えて買ったものは再現が可能です。でも誰かに用意されたものだと再現性がありません。あと誰かに褒められたとしても、自分で買って考えて着た場合のほうが嬉しいと思いませんか?
A そうか、自分でコーディネートを考えたからこそ、褒められたときにより嬉しく感じるのか。ドヤ感が違うというか。
MB そのとおり!
A なんか恥ずかしいです……。ところでMBさんのそのジャケットかっこいい ですね。どこのブランドなんですか? 欲しいなあ。
MB そう、それです、それ!
A だから、なんですか急に(笑)。
MB 見事にハマっているのでつい嬉しくて。というのも、いま、私のことを褒めてくれましたよね。相手を褒められるようになるのもおしゃれになることの効果ですよ。
A たしかに、前に比べてほかの人の洋服が気になるようになったし、自分が褒められるようになったから、逆に人のことを気軽に褒めるようになったのかも。会話の糸口にもなるし。あと友村さんもそうだったけど女の人って基本的に褒め上手な気がします。
MB 女性は男性よりもファッションへの興味の度合いが強いですし、女性は共感する感度が高いからだと思います。たとえば、男性は狩りで仕留めてきた獲物が大きければその成果が自信につながります。一方、男性が留守の間、協力しながら暮らしてきた女性は、相手の努力に対してカッコいいとかカワイイということを認め合ってきた。そう考えると、そもそもコミュニケーションのスタイルが違うのかもしれません。例の友村さんをデートに誘うときは、もっと共感し合って信頼を高めてからにしてくださいね。
A (ギクリ)。洞察力、すごいっすねえ……はは……。
MB いま私を褒めてくれたのはさっきと違って少し卑屈な感じがします。相手を褒めるという行為は、相対的に相手を自分より上に置かないといけないので、男性からすると得意じゃないという面もあるでしょうね。
A なるほどなあ。
MB ところで今日はせっかくですし、次のステップに進みませんか?
A 変な壺とか売りつけないでくださいよ?
MB それ、マジで言ってるのなら怒りますよ(笑)。先にお話ししておくと、MBメソッドを使っておしゃれができるようになると、おしゃれになって、自信がついて、褒められるようになります。そしてそこから次のステップに向かうことがとても重要なのです。
ステップ①おしゃれになる
ステップ②自信がつく
ステップ③褒められる
ステップ④差別化できる
MB あなたはすでに①から③については経験したと思います。今日は、私がもっとも重要視しているステップ④の「差別化」について、じっくりお話ししたいと思います。ファッションはもちろん、仕事や恋愛を含めて豊かな人生を歩むためには、差別化することが何より大切です。そして、おしゃれに興味をもてば、着こなしがうまくなるだけでなく、人としても成長できるってことをお伝えしましょう。
A なんだかわかんないけど、友村さんとデートするため……じゃなくて、僕も聞きたいことがいっぱいあるのでちょうどいいかも。
おしゃれは最高の自己啓発である
MB そもそも私がおしゃれにハマった理由を覚えていますか? A お兄さんに服を借りて開眼したとか……。
MB 兄に服を借りたことがきっかけでファッションにハマり、服によって自分が変わる素晴らしさを実感したという話です。
A ああ、そうだ。それまではマンガとゲームオタクで、あと、クラスで一番のバカだったんでしたっけ?
MB ええ。って、クラスで一番ではなかったですけどね(笑)。
A でも「おしゃれは最高の自己啓発だ」って言いますけど、ファッションと自己啓発の組み合わせってありそうでないですよね。デキる男はスーツが違う、といった指南書はあっても、スーツを替えればデキる男になるというアプローチはあまり見かけません。
MB 「人を外見で判断するな」と刷り込まれてきたからでしょう。外見を変えて自信をつけようなんて、いかにも軽薄に見えますから。あなたも実践するまでは服で人が変わるなんて思ってなかったでしょう?
A はい。人を外見で判断するなっていうのは、一見するとそうは見えない人が実はすごい人かもしれないといった教訓もありますよね。
MB オフィスで掃除をしている人が実はその会社の経営者だった……というのはドラマの演出では定番ですね。ただ、いずれにしても、人を外見で判断するなとは、逆にいえば人は外見で判断しがちってことでもあります。つまり、相手の自分に対する印象を外見でコントロールすることは可能なのです。
A 相手を騙すってことですか?
MB 意図せず悪い印象を抱かれることを避ける、清潔感があると思ってもらうくらいでもいいでしょう。
A でも、それが最高の自己啓発であることの根拠ではないですよね?
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。