さて、前回はメディア立ちあげにあたって必要な「理念」について、岩波文庫を例に語りました。が、「理念」だけでは、読者にとってはクソの役にも立ちません。「理念」という精神に、骨を通し肉付けしていく段階に入ります。具体的には「何を」(=テーマ設定)、「誰に」(=ターゲット読者)、「どのように」(編集的な方法論やトーン&マナー)伝えていくか、これらを決めるプロセスになります。そして、この「誰に」「何を」「どのように」の3点セットが、いわゆるメディアとしてのコンセプトの中核になります。
私もこの10年ほど散々、新規メディアのコンセプト設定について考えてきました。そして、通常のプロダクトマーケティングの手法をメディア作りに当てはめて、「消費者ニーズ」(読者の情報ニーズ)を探り当てようとすることに躍起になるプロセスを何回も実体験してきました。
具体的な実作業としては、読者ニーズに関して「仮説」を立て、マクロミルなどのネット・アンケート通じて定量調査を行い「あなたが興味・関心のあることは何ですか? 以下の選択肢をチェックしてください」式のリサーチをやったり、対象読者と類似の人を集め、専門リサーチャーに委託して、グループインタビュー(要はマジックミラー越しに見る座談会)をやったりするわけです。
そして、いよいよ思い至ったことがあります。今日はそのことについて書きましょう。